第二回 残された姫
「姫、危険ですからお戻り下さい」
「申し訳ありませんが、もう少々いさせて下さい。イブが外に出たがっておりましたので」
中央大陸に存在する、小国領土内での会話。『ルシェミー王国』というれっきとした王国で、現在はまだネオゼネバス帝国の攻撃を受けていない数少ない国である(元々デルポイにそう多くの国はない)。以前は共和国との貿易を行っていたが、戦線がじりじりと縮まっている今日、とても交易など出来ない状況であった。
「どうかお願いです、姫。今の状況では、いつゼネバスが攻めてくるとも知れないのですよ・・・いいえ、今やヘリックにすら攻められる可能性すらあるのですが・・・」
「もちろんわかっております。ですから民を皆、城内に収容しているのです」
『姫』と呼ばれた15、6歳程の少女と、その姫を連れ帰ろうとする若い男。その背景には、ゾイドがいる。恐竜タイプの、中型。帝国・共和国のどこを探しても、こんなゾイドは見つからないだろう。ただの改造機ではない。全く別機種のゾイドである。
「そこまでご存知ならば、現状がどれだけ危ないかお解りでしょう?」
「・・・わかりました。そろそろイブも、外の空気を沢山吸ったでしょうから」
少女は『イブ』と呼んだ、足元の小動物を撫でた。男の方は、やれやれとした表情でゾイドに歩み寄った。その男に、多少武装は異なるが同種のゾイドに乗る、別の男が声をかけた。
「隊長ー。帰るんですかー?」
「あー。一応周りを索敵しておけー」
部下に命令を下した男。彼は、王室護衛の部隊長だった。姫に対して危険だとは言いつつも、彼自身、そう急に敵国が攻めてくるとは思っていなかった。お世辞にも大きな国とは言えない、領土もあまりない国。強いて言うならば、この国には特殊なゾイドが配備されているという事だ。そう、今ここにいるベロキラプトル型ゾイドの事だ。
「では、姫。行きましょうか――――」
その時、視界の端で何かが光った。見ると、遥か上空が紫色に輝いている。かと思ったら、その光が集束され、ひとつの『点』になった。次に、その『点』は巨大化し、間もなく太い『線』となり、地上に降り注いだ。それと同時に、爆音が轟いた。
「!!・・・あ、あの方向には・・・」
誰ともなく呟いた。その光は、彼らの国、ルシェミー王国全土を包んだのだ。爆音は、光がただの輝きではないことを示していた。危険を感じた護衛隊は、急いで愛機に乗り込んだ。隊長である男は、姫を共に乗せた。
光のすぐ後に、熱風が襲ってきた。すさまじいほどの爆風。重量の軽い中型ゾイドは、簡単に吹き飛ばされてしまった。
「ぐああぁぁぁ・・・」
たまらず叫び声をあげた隊員達の意識が戻ったのは、それから数分後のことだった。
「・・・姫?お怪我はありませんか、姫!?」
「う・・・大丈夫です。他の皆様はいかがです?」
それを聞いた隊長は、通信を開いて仲間の無事を確かめた。機体も飛ばされただけで、目立った損傷もない。しかし、あの光は一体・・・。
「!!・・・た・・・隊長・・・・・・王国が!!」
その声に反応した全員が、自分達の国があるはずの方向を向いた。だが、そこには何もなかった。町も、畑も、民家も・・・王宮までもが、完全に存在を無くしていた。
「ち、父上!母上!!」
姫の叫びと同時に、全機発進していた。
数分後、隊は王国の城下町の入り口があった場所まで来ていた。だが、そこには丸くえぐれた地形が、ただひたすら広がるだけでしかなかった。虚無の空間だった。
「な、何て事だ!おふくろも、子供も・・・みんな消えちまいやがった!!」
誰も、原因がわからなかった。わからないまま、放心するだけだった。だが、そんな時間も短かった。帝国の部隊がやって来たのだ。
「ゼネバス!!貴様らがやったのか!?」
だがそれは、言った本人ですら到底信じられないものだ。いくら敵が最先端の技術を持っていても、国を光で丸ごと消せるはずがない。
「王室護衛部隊!ここは逃げるぞ!!」
敵は、ジェノザウラー部隊の中にディメトロドンを連れていた。こういった大型電子戦ゾイドは、集団戦で真の実力を発揮するのだ。それに彼らは、そう実戦経験が無い。式典と哨戒任務程度しか出撃する事もないため、直接戦っての勝ち目はうすい。逃げるべきだ。だが、敵もそうタダでは逃げさせてはくれない。機動力に優れたジェノザウラーが、前方に立ちふさがる。
「どけえぇぇぇ!!」
隊長機が、腕のブレードでジェノの腕を切り落とし、他の機体もそれに続く。ブースターを使い、全力で戦線から離脱しようと試みる。だが、それもかなわなかった。敵は想像以上に強く、逃げ切れそうにもなかった。
「・・・姫、お逃げ下さい。我々が死力を尽くせば、姫様お一人をお逃がしできましょう」
隊長は、ある決心をした。後部座席に乗せている、王国の姫。もし本当に国が滅びてしまったのなら、この姫が現在の王。彼女をここでネオゼネバスの手にかけさせはしない。
「一体どうなさるおつもりです?これでは逃げられるとは思えません・・・」
「姫、ご辛抱を!」
隊長は、ハンカチを素早く液体でぬらし、姫に嗅がせた。途端、姫の意識が切れた。液体は、催眠効果があるものだった。
「・・・サンダー。なにがあっても、姫をゼネバスの手に渡すな。お前は姫を乗せ、生き延びろ」
彼の愛機はその想いを受け取り、コクピットに備え付けてある対ゾイド用のライフルを出した。主人が生身でゾイドと闘うために。男はそのライフルをしっかりと握り締め、通信機に叫んだ。
「今から、俺のサンダーに姫だけを乗せて走らせる!俺達の任務は、姫を守る事だ!わかったな!?」
隊長は、隊全員の命を引き換えに姫を逃がすつもりだ。そう思った隊員達は、自機を壁にして、姫のための退路を作った。そこを姫を乗せたゾイドが抜け、一気に離脱する。そして隊は時間を稼ぐ為に、ジェノ達に向かって特攻をしかけた・・・。
ラグナロック隊 キャンプ―――――
「ホーク、確かにパターンが一致するんだな?」
「あぁ。ただ、我々とも、ゼネバスとも違う識別信号だな」
キャンプでは、ここより数kmの所で停止しているゾイドの反応をキャッチし、それの対応をしている所だった。
「う〜ん、アナザーじゃ無いし、単機だからなぁ・・・シーフ、行ってくれるか?」
前回の、レオとの戦闘から数日。分析も多少ながら進み、コアブロックの発する周波数はZi製のゾイドと違うので、離れた場所からでも判別が出来ることが明らかになっていた。それと共に、異星人製のブロックゾイドを、『アナザーゾイド』と呼ぶように統一された。
「オーケー」
やれやれ、とでも漏らしそうな口ぶりでシーフが言った。そのまま格納庫に歩いて行く。彼自身、所属不明の機体の確認など、どうでも良かった。それよりも、敵に対抗できる力が欲しかった。ここは派遣軍の中でもエースパイロットの集まりだ。自分がライガーゼロのパイロットでも、それほど大きな活躍もできなかった。特に、同じゼロのパイロットでもかなりの実力のあるガイアやデュークにはライバル心さえ持っていた。だが、そいつらさえ手を焼く敵がいる。以前ここのキャンプにいたフューラーやジェノだ。
「やぁ、シーフ。未確認だから、気を付けてくれよ」
バニッシュの通信機越しの声援もさほど聞かずに出撃する、ライガーゼロ・イエーガー。彼はこの日を境に、今までとは別人に変わることになる。
「・・・あー、アレだなぁ」
外部スピーカーのスイッチを入れ、パイロットに呼びかけた。恐竜型のゾイドで、カラーリングは金を使った豪華なもの。派手なだけかと思うが、レーザーブレードや共和国製のフレキシブルブースター等を装備し、実戦にも耐えうる機体だ。少なくとも、シーフが見た事のないゾイドだ。ゼネバスの新型か、改造機か。
「そこのゾイド、所属はどこだ?」
だが、目の前の恐竜型はピクリとも動かなかった。それに対し、違和感を感じるシーフ。
「んー?」
機体を隣接させて、コクピットを見る。装甲式で中は見えない。仕方なく乗り移り、警戒しながらコクピットをこじ開けた。シートに座っているのは少女だった。どうやら眠っているようだが、パイロットスーツどころか軍服も着ていない。いいや、それ以前に、ゾイドに乗るのには邪魔そうなドレスを着ている。到底兵員には見えない、少女だ。
「――――あー、こちらシーフ。登録不明のゾイドと接触。これより帰投する」
その通信より数十分後、シーフは、隊内の誰も見たことの無いゾイドを連れて帰ってきた。ひとまずハンガーに固定してコクピットに再度呼びかける。が、一向に反応がない。パイロットは少女というシーフの言葉で、ヘレンが機体に駆け上がり、今一度コクピットをこじ開けた。
「ガイア隊長。気絶してるわ、このコ」
少女は医務室のベッドに寝かされ、ゾイドはバニッシュ達が調査を始めた。しばらくして、少女が目を覚ました。
「・・・う・・・・・・ここは・・・どこ・・・?」
「あ♪起きたのね。心配しないで、ここは安全よ」
少女には、ヘレンがずっとついていたのだ。彼女は年下に甘いのだ。そして、そこが彼女のいい所の一つであった。
それから、報告を受けたガイア達が部屋に入ってきた。
「ガイア隊長。このコ、意識もハッキリしてる。どうやら薬をかがされただけのようなの」
「ありがとう、ヘレン。・・・・・・さて、まず自己紹介をしよう」
部屋に入ってきたのは、ガイア・ロール・シーフの三人。それぞれが自己紹介をし、ここが連合軍のキャンプだという事を、なるべく誤解のないようにやわらかく、混乱を起こさないようにゆっくりと話した。
「・・・で、キミは今ここにいる、ということだ。次は、キミの事を少し聞かせて貰えないかな?」
ベッドに座ったままの少女は、こくんとうなずき口を開いた。
「・・・私の名前は、クリスチーネ=ルードです・・・」
「『ミシェール』が抜けてるぜ、ルシェミー王国のお姫様♪」
シーフが突然喋った。おそらく彼は、機体と少女の格好を見て気付いたのだろう。少女は、暫(しばら)くうつむいた後、再び名前を言った。
「・・・クリスチーネ=ルード(L)=ミシェールです・・・・・・」
「・・・で、ドコにあるんだ、その『ルシェミー王国』は?」
自分の事は『クリス』と呼んで欲しい、本名を名乗った後にそう言った姫。だがクリスは、それ以上の事は話さなかった。なぜか、そのまま泣き崩れてしまったのだった。それで、ひとはず質問は終了。ロールに後を任せ、ガイア・シーフ・ヘレンの三人は部屋から出た。
「ここから・・・そうだな、北東に50kmぐらいだと思ったが」
「そうか、ありがと」
ガイアはシーフの方を振り返り、短く言った。
「見て来る」
と同時に、格納庫にいるバニッシュ達に声をかけるべく走っていった。後ろでヘレンが聞き返していたが、気にとめなかった。
格納庫では、機体の分析はほぼ完了。起動テストを行う所だった。だが、そのテストは上手くいっていなかった。クリスの乗ってきたゾイドが、動いてくれなかったのだ。まるでパイロットを拒むかのように、精神的ストレスを送るのだ。
『ロベルトォ、なんとか歩けそうかァ?』
「くっ・・・」
すでにデュークや、ティラノサウルス系の扱いに長(た)けたブラッドが乗り込んだが、システムがすぐに停まってしまっていた。自然体で、ゾイドと心を通わせやすいロベルトですら、この有様である。
『お疲れさん。ロベルト、上がってくれ』
内部通信でバニッシュが言うと、口惜しそうにロベルトが降りてきた。そこに、ガイアがやって来たのだ。何か考え事でもしているように、難しい顔をしている。
「おォ、ガイア。大体の調査は終わったぞ」
「そうか、じゃぁ説明を頼む」
だがそれでも表情を崩さないガイア。彼は、機体と王国、そしてクリスの関係を知りたかった。
「機体名は、『サンダーラプトル』、所属はルシェミー王国っていう国らしい。その国だけのゾイドらしく、見た目は似てるがガンスナイパーとは別物。だが装備品は共和国の物を流用している」
「じゃあ、機体から得られたデータの中に、王国に関する情報は?」
説明は続いた。まず機体の起動実験が進まない事。次に、機体が指令機であるために王国の国防軍内部の形が判明した事。それと、機体レコーダーに残っていた映像。それは、王国の跡を映していた。
「・・・まさかとは思ったが、どうやらそうらしいな」
独り言のようにそれだけ喋り、いつの間にか手に持っていたヘルメットをかぶり愛機に乗り込むガイア。その行為は、バニッシュ達を困惑させた。
「お、オイ!どこ行くんだ!?」
「その国の、現地捜査に行く。場所は聞いたからな。ハッチ開け!」
ナギサがしぶしぶ格納庫の壁を開けると、カスタムUが一気に駆けていった。自身の鍛錬のために、ほぼ全速力で機体を走らせた(エネルギーがもったいないと、キリーが後で通信を入れた)。
その頃、医務室ではロールがクリスをなだめていた。その甲斐(かい)あってか、クリスも多少は泣き止んだ。
「・・・話したくないんなら、話さなくてもいいのよ。無理矢理聞こうなんて言う人は、ここにはいないから」
その優しい言葉に、ふるふると首を横に振り、改めて話し始めた。
「・・・お陰様で、少し落ち着きました。先程この場所の事を聞かせて頂きましたので、今度は私の番ですね」
3時間後―――――
ガイアは調査から戻り、クリスのいる医務室の近くに来ていた。しかし、足が思うように進まなかった。王国を見たときは、ガイアでさえ絶句してしまった。それ程悲惨だったのである。それを、たった一人の少女に聞かせなければいけない。
「・・・つらい、よなぁ」
ポツリと漏らして、歩を進めた。事実を伝えるべきだ。ドアをノックすると、シーフの声が返ってきた。フゥ、とため息をして、中に入った。
「ただいま。・・・クリス姫、キミの王国を見て来たよ」
その言葉に、ビクンと反応するクリス。隊員達との会話で和んだ心が、急に冷める。
「・・・・・・何もなかった、穴だけだ」
「だ・・・誰か、人はいませんでしたか・・・?」
ガイアは数秒ためらった後、残念そうに言った。
「一人も、いなかった。みんな、いなくなってしまったんだ」
「・・・そん・・・な・・・」
クリスの身体が震えているのが、隣に座るロールにもわかった。そのまま、再び涙を流し始めた。
「お父様・・・お母様・・・・・・」
そして両手に顔をうずめ、手に涙を溢れさせた。見ていて、非常に心が痛んだ。
「ガイア。クリスさんは、王室の護衛隊に守られてここまで来たそうなの。その人達も、見なかったの?」
「・・・サンダーラプトルの残骸はあった。だが、パイロットは捜せなかったんだ・・・」
ロールも口を閉じてしまった。機体が残骸、ということは、パイロットは脱出するか、ゾイドと共になるかだ。だが、パイロットは捜し出せなかった。つまり、パイロットは後者なのだ。それでガイアは、次の話に移った。
「王宮があるべき場所には、巨大な穴が空いていた。この惑星Ziのどんな兵器をもってしても、あんな大きな穴は空かない・・・間違いない、異星人の仕業だ」
それを聞き、シーフの表情が変わった。内からこみ上げる怒りを、必死に抑えている顔だ。シーフは、たらし的な性格であったが、同時に女性を大切にする男だった。無論、少女もその中に含まれる。クリスから全てのものを奪い、消し去った異星人が、憎くてたまらなかった。
「クソ・・・異星人め!なんで、軍の拠点以外の場所を攻撃したんだ!?」
そういった話をしたころ、クリスは涙を拭き、ガイアの方を向いていた。
「わ・・・私は、これから・・・どうすれば、よろしいのですか?」
拭いた涙も、後から後から流れ出る。涙ながらの一言だった。
「ひとまず、クリスにはここのキャンプにいてもらおう。上層部に引き渡してもロクな事がない。現状では、ここが最も安全だからな」
ガイアは言葉を続けた。シーフを自分の前に押しやりながら。
「なにか困ったコトがあったら、このヒトを頼るといい」
ロールは驚愕(きょうがく)した。ナンパで女たらし(ロールの見解だが)のシーフに、心に傷を負った少女の世話をさせるべきか、と。
「ガ、ガイア!?本気なの!?」
「大丈夫だって。こんな可愛いコに手を出すハズ無ェもんな、シーフ?」
始めの方は少々ふざけたような声だったが、最後の言葉には、かなりのプレッシャーがかかっていた。
「も、もちろん。ロールちゃんは心配性だなぁ・・・」
だがその直後、けたたましい警報が鳴り響いた。ナギサの声でアナウンスが入り、キャンプが騒がしくなる。
「アナザーめ、今すぐ叩きのめしてやる!」
「シーフはここで留守番」
やる気満々のシーフに対し、待機命令をだすガイア。シーフはその言葉に驚きと、わずかな怒りを覚えた。
「ガイア!何故だ!?」
「お前はクリスのそばにいてやれ」
ふと見ると、クリスは震えていた。戦場の雰囲気、前線の危険を肌で感じ取っているのだ。そこから感じるものが、とてつもなく恐ろしかった。その隣にシーフが腰掛け、肩に手を回す。
「・・・大丈夫。ここは安全だ。危険なんて無いんだ」
ポンポンと肩を叩き、クリスの緊張を少しでもほぐそうとする。さすがに巧いな、とガイアは思った。思いながら、ロールと共に部屋を飛び出した。
「・・・敵、こちらに接近、数は2!前回と同じライオンタイプと・・・ラプトルタイプ・・・?」
キリーのイクスがアナザーゾイドを高感度レーダーで捉えた。一機はこの前のレオと同じようだが、もう一機は恐竜型をしていた。
「んー・・・多分、ウネンラギア型だろう。手にマシンガン・・・な!?尻尾はアサルトライフルだ!」
その報告を聞き、ガイアは判断を下した。
「距離を取るとこちらが不利だ。近接格闘に持ち込み、確実にコアブロックを破壊する!ホーク、ナギサ、バニッシュはいつも通り援護、他で包囲する!」
一旦包囲した後に輪を狭め、分裂の範囲を無くしてしまおうとする作戦だ。だがその作戦は、開始される事は無かった。包囲が出来なくなったのだ。
「・・・!誰か攻撃したのか!?」
布陣の途中で、敵機が二機とも分裂した。だが、誰かが砲撃したわけでも、まして磁場を乱したわけでも無かった。そのまま二機のパーツは、信じられない集合体へと変化した。二機が、合体したのだ。
「トカゲ・・・なのか?」
ダブルアームリザード、誕生の瞬間だ。それに見とれていた皆は、一瞬の隙を突かれる。突如リザードがブースターを点火。接近組の間を通り抜け、ホークのパンツァーに斬りかかった。とっさにかわすホーク。それと同時にブレイドがストライククローを振りかざしたが、その爪はリザードを捉えられなかった。
「どけっ、ブレイドォ!」
ブラッドが荷電粒子砲を放った。慌ててブースターを使い射線上から外れるブレイドに対し、リザードはその場で分裂。粒子砲を回避し、ブラッドが狙ったわずかなキズでさえも、二倍になったゾイドコアの再生能力で治ってしまった。
「チィッ!」
ガイアはカスタムUを、ビームキャノンを撃ちながら加速させた。分裂して損壊を無くすリザードに、なおも突っ込む。そして、再度合体するよりも早くEシールドを展開。パーツを前方に吹き飛ばした。
「ヘレン行ったぞォ!」
飛ばされたパーツの行き先は、ヘレンの駆るゴジュラスギガだ。ギガの目の前で合体し不意を突くつもりだろう、飛ばされながらもブロックが連結していく。
「ハァァッ!!」
全身が完成するかしないかといった瞬間、ギガが大きな口を開きリザードの前足に喰らいついた。コアブロックまでは届かなかったものの、肩を丸ごと破壊する事に成功。リザードは破損したパーツを捨て、ザンブレードでギガの脚に攻撃した。キィンという音がして、ブレードがきれいに折れた。ゴジュラスとは比較にならない硬度の、古代チタニウム製の重装甲。それには小さなブレードなどほとんど通じなかった。
「ショックかしら?」
その直後、デュークのゼロが真上から落下し、レーザークローで瞬く間にリザードの後ろにあったコアを叩き潰した。
「今だナギサ!撃てェ」
「言われずとも!」
デュークとヘレンはすぐさまリザードから離れた。そこにバスターキャノンやメガビームライフルが撃ち込まれ、リザードのコア反応は完全に消えた。
「・・・磁力での結合・・・装甲・武装の搭載・・・異常なし。あぁ、ロールちゃん。この報告書、ガイアに渡しといてくれねェか?」
「ハイ、わかりました」
戦闘終了後、回収されたリザードのパーツは、すぐさま調査された。後方に送った前回のレオは、ブロックと共に修理が行われていた。自分達の戦力とするために。ラグナロック隊としても、手に入れたライフルやマシンガン、ブレード等を有効利用したかった。実はギガが配備されてから数日後に、武装の補給を要請していた。だが、アテナ基地を離れてしまったためにその件がうやむやになってしまい、開発当初から企画されていたバスターキャノンの搭載すらないノーマル状態のギガがあるだけだった。ギガの強化は陸軍の方で行われており、特殊部隊に配属されたギガはデータ収集のための機体、と言っても間違いではなかった。
「せっかく無事に回収できた武装だ。ギガの強化にも使えそうだしな」
バニッシュは少し微笑んだかと思うと、ブロックの方に目をやった。
「・・・だが、ゼネバスもおんなじ事を考えてるんだろうな・・・」
「あ、いたいた。ガーイーアー!」
「ん?あれ、ロールじゃないか。どした?」
ガイアはビームキャノンの出力調整をやっていたらしく、カスタムUの背の上に立っていた。そこから愛機の身体を器用に伝って地面に降り、ロールの元へと走った。
「バニッシュさんからの報告書。ハイ」
「お、ありがとう。えーと、何々・・・」
バニッシュの報告書には、良い事と悪い事が書いてあった。
「アナザーゾイドは各部をブロック化し、生産性・整備性を高めた、画期的な量産兵器である。コアブロックはゾイドコアと少々差があり、マグネッサーシステムと同様の原理で分離・合体を可能としている。そのため、コアを入手できれば、アナザーゾイドのパーツを組み上げ、我々の武器として使用することも可能となり得ると推測される・・・」
その後は、このブロック化したボディの内部構造、原料、さらに、身体の一部(レオの頭など)も完全な機械で出来ており、野生体となるゾイドを必要としない事までつづられていた。
「・・・こりゃ、利用は難しいナァ」
ガイアは残念そうに肩を落とした。だが、ロールは意味がわからなかった。
「・・・そんなに大変なの?」
「考えてみろ。今までの敵は、『コアを破壊する』事で活動を停止させる事が出来ていた。でも、こっちの武器にするなら生け捕りにしなきゃいけないんだろ?・・・どうやって?」
敵を倒すだけでも、あれだけ苦労したのだ。その敵をなるべく傷付けず、生かしたまま保管する、などという事を可能にするだけの設備、ましてやその方法すらわからないのだ。
「当面上は倒し続けるしかないからなー」
ハッキリ言うと、ガイアはあきらめていた。それに対し、ロールは別の事を考えていた。
「(・・・マグネッサーシステムを使ってるなら、私のウォーラスで・・・)」
「さーて、仕事に戻るか。ありがとうな、ロール」
「いいえ。あんまり無理しないでね」
そう言いつつも、自分も愛機の調整に向かった。何か良いテが思い浮かんだのかも知れない。
「ハハハ、言われちまったよ、カスタムU」
グルルルルと、嬉しそうにカスタムUがうなり声をあげた。
第二回 終わり