ZAC2101年 12月 8日 遺されたモノ



ZAC2101年 12月 8日 遺されたモノ

この日記帳を再び開くまで、だいぶ時間がかかってしまった。
とてもつらい出来事がたくさんあって、本当は悠長に日記なんてつけていられない。
でも今のこの想いを形にして、忘れないようにしたい。だから書く。

帝都ヴァルハラは地獄絵図そのものだ。共和国軍との戦場になった場所には、人間、ゾイドの屍が無数に転がっている。無残としか言いようが無い、元同僚・元敵の変わり果てた姿。それも、肉や金属の塊と言った方が状況を正確に表している。
『片付け』に参加した奴の中には食ったもんをもどす奴も居たが、無理もない。俺も、できれば直視したくない景色だったからな。

そしてそれらをも消し去った跡が、帝都の随所にあるらしい。俺もその一箇所を見てきた。
俺の、家があった場所だから。

なんにも残っちゃいなかった。只の穴ぼこ。こうして見ると、どこに何があったかなんて全然分からない。近所だったのにさ。むしろ、最初からこうだったみたいだ。
家も、思い出も、何もかも無くなっちまった。

これをやったのは、今まで俺達帝国軍人が盲目的に従ってきたギュンター・プロイツェン摂政だと聞いた。かのゼネバスの血を引く、ギュンター・プロイツェン・ムーロアが。帝都を餌に、共和国軍・帝国軍をまとめて始末するつもりだった、とさ。

その時、両親は家には居なかったらしい。最初にそう聞いた時には、俺もホッとしたよ。その続きを聞かなかったらどれだけ幸せだったろう。

帝都で研究を続けていた俺の両親は、既にプロイツェンナイツの手で殺されていた。

何で、まだ残ってたんだろう。戦闘員でもないくせに、どうして逃げなかったんだろう。
どうして殺されなきゃならなかったんだ。俺の両親が、ゼネバスに何をした?

まだ話したい事があった。母さんが造ったライガーゼロを乗りこなした様を見せたかった。父さんに、また撫でて貰いたかった。
最後に会ったのは何時だっけ……? あぁ、ウルトラザウルスを目指す前だったな。遺言状を用意するような事になるなんて、なんて言っちゃってさぁ。



そんな両親が死んで、俺に遺されたのは師匠から渡されたライガーゼロだけ。遺品なんかも回収されちまってさ。
ずるずると消耗戦になって、帝都の目前まで迫られて、何を思ったんだろうな。死に目に立ち会う事もできなくて、それどころか1年も会ってない。そんな息子を、どう思って逝ったんだろうな。

これからどうしていいのか、俺にはまだ分からない。仇はみんな死んでいて討ちようが無い。みんなのようにゼネバスを恨む事もできない。誰かを追い詰めて、或(ある)いは殺して……それで気が済む筈が無い。
何をしたって、この想いから解放される筈が無い。

それでも俺は、いや俺達は、何かをしなくちゃならないと思う。志半ばで逝った人とは違って、俺達はまだ生きてる。ならその分、できる事がある筈だ。
それがどんな事なのかはまだ分からないけど。

死に損なったこの命。せめて有意義に消費したいと思う。

今日の一言:「俺は最期に、何を思って逝くんだろうな」






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