森博嗣語録 +++++++++++++++ 善と悪、正と偽、明と暗。 人は普通、これらの両極の概念の狭間にあって、自分の位置を探そうとします。 自分の居場所は一つだと信じ、中庸を求め、妥協する。 だけど、彼ら天才はそれをしない。 両極に同時に存在する事が可能だからです。 +++++++++++++++ 萌絵は顔の横で両手を広げてみせた。 人類は十進法を採用しましたというジェスチャではない。 +++++++++++++++ 「思い出と記憶って、どこが違うか知っている?」 犀川は煙草を消しながら言った。 「思い出は良いことばかり、記憶は嫌なことばかりだわ」 「そんなことはないよ。嫌な思い出も、美しい記憶もある」 「じゃあ、何です?」 「思い出は全部記憶しているけどね、記憶は全部は思い出せないんだ」 +++++++++++++++ よく、そんなことでは生きてはいけないとか、健康ではないっていうけどさ、 生きているとか、健康であるということに、一体何の意味があるっていうんだろう。 +++++++++++++++ そもそも、命を懸ける、などという表現がおかしい。 生まれたときから、誰でも命懸けなのだから。特に気合を入れるほどのことではない。 +++++++++++++++ 人間だけが、悲しいのに笑える。嬉しいのに泣けるのだ。 +++++++++++++++ 「先生……、現実とは何でしょう?」 「現実とは何か、と考える瞬間にだけ、人間の思考に現れる幻想だ」 +++++++++++++++ 0に1を足せば1。0に1を掛ければ0。 計算をして、処理をして、格納して、参照して、消去して、結局は、答えを一つに規定する。 この単純化を伴う統合に、自らの能力を抑制する。それが普通の人間です。 ところが、彼らはそれをしない。それが不合理で不自由だと、子供のときから知っているのです。 天才は計算をしても答えを出さない。彼らは、計算式そのものを常に持っている。 我々は答えしか持たない。これが、凡人と天才の差です。 だから、コンピュータにも真似ができない。計算しない計算機なんて作れない。 +++++++++++++++ 犀川は、そう結論した。 いや、そう定義した。 そう定義したかったのだ。 (定義するものが存在するものだ……) +++++++++++++++ 「三対四対五くらいの直方体だよ、一番好きなのは」 「平面では、正七角形かな……。あるいは、一対一・三くらいの楕円も捨て難いけど」 +++++++++++++++ 真実とは、放った矢が、的の中心にどれだけ近く当たったか、である。 どの的を狙って放たれたかには関わりなく。 +++++++++++++++ 飛べないことを 知らない連中が 飛んでいるのだよ 生きられない理由を 知らない連中が 生きているように +++++++++++++++ 死を恐れている人はいません。 死に至る生を恐れているのよ。 苦しまないで死ねるのなら、 誰も死を恐れないでしょう? +++++++++++++++ 十万桁まで計算されたパイに人間性がないというのですか? 人間以外に誰がします? +++++++++++++++ 記号を覚え、数式を組み立てることによって僕らは大好きだった不思議を排除する。 何故だろう? そうしないと、新しい不思議が見つからないからさ。 +++++++++++++++ 「当たってふざけろ」 「コードレス糸電話『メガフォン』」 「若者の集団で全員髪が黒かったら、間違いなく外国人」 「人のフリフリ見て、我が子のフリフリ許す」 +++++++++++++++ 長く生きた そう思う。 意味もなく、希望もなく、 何も願わず、何も祈らず、 よく、ここまで生きてこられた。 よくも、生きる作業を切り捨てずに、いられたと思う。 +++++++++++++++ 気づいているか? 大人になる、という意味は、死を意識して、臆病になる、たった、それだけの価値。 +++++++++++++++ どうして、普通のものを決めるのだろう。 普通を決めるから、普通じゃないものができてしまう。 理不尽な話ではないか。 何をもって普通なのか。意味はないのに。 そういう確固とした理由もないところで境界を無理に作ろうとする姿勢が、普通という馬鹿なやつの正体だ。 +++++++++++++++ 「どこにいるのかは問題ではありません。会いたいか、会いたくないか、それが距離を決めるのよ」 +++++++++++++++ 「伝えたいものは、言葉で言いなさい。それが、どんなに難しくても、それ以外に方法はない」 +++++++++++++++ 面白ければいいんだ。面白ければ、無駄遣いではない。子供の砂遊びと同じだよ。 面白くなかったら、誰が研究なんてするもんか。 +++++++++++++++ 「子供に夢を与える」と言いながら、本当に夢を見る者を徹底的に敗訴しようとする社会。 集団はいったい何を恐れているのだろう。 +++++++++++++++ 「ありがとう。言葉は、言葉だけなのに、でも、結局、言葉が嬉しいわ」 +++++++++++++++ Time is moneyなんて言葉があるが、それは、時間を甘く見た言い方である。 金よりも時間の方が何千倍も貴重だし、時間の価値は、つまり生命に限りなく等しいのである。 +++++++++++++++ 「面白い話をしているときには、いついかなるときでも、けっして時間を気にしてはいけませんよ。 理解できないというのは、身を引いて、考えるのをやめてしまうからです。 面白いことから逃げてはいけません。人間としての鉄則です」 +++++++++++++++ ほとんど確信していたことだったが、実際に言葉にすることは極めて難しく、 そして、拙くても、不足していても、言葉になったときには、とても嬉しいものだとわかった。 +++++++++++++++ 「皆さん、よろしくて?誰のためでもなく、何のためでもなく,誰にも願わず、何も祈らず、乾杯!」 +++++++++++++++ 「自分の意志で生まれてくる生命はありません」 +++++++++++++++ 正しい、というのは、そちらのほうが強い、という意味に限りなく近い。 実際に殺し合いをする戦争も、話し合いによって少数意見をねじ伏せる議会も、 結局は力の行使という点では違いは僅か。 +++++++++++++++ 「自分の人生を他人に干渉してもらいたい、それが、愛されたい、という言葉の意味ではありませんか?」 +++++++++++++++ 「愛情なんて、どこからだって芽生えます。なにかが擦れたときに発生する摩擦熱みたいなものです」 +++++++++++++++ 「西之園さん、あなた、犀川先生が好きなの?」 「はい」 「あそう。それがわかっているなら、十分じゃない」 「え、どういうことですか?」 「貴女としては、それで十分だということよ。なにが不満なの?」 +++++++++++++++ 「好きな人が教えてくれることってものすごくしっかり頭に入ってしまうものなの。 一度聞いただけで絶対に忘れないわ。 だからもし、しっかりと覚えたいことがあったら、人でも本でもその相手を好きになることね」 +++++++++++++++ どんなに興味深い会議でも、終わると嬉しい。 それと同じように、どんなに苦い恋愛も、終わると寂しくなるようだ。 +++++++++++++++ 結局のところ、空にはなにもない。だから、空なのである。 +++++++++++++++ 眼中にないね。あるのはコンタクトのみ。 +++++++++++++++ 「真実というのは他人の理解とは無関係です」 +++++++++++++++ 悔いはありません。いえ、もちろん、悔いはある。 でも、これを選んだんです。これよりも私らしい選択は、なかった。 +++++++++++++++ 「先生……。私、最近、いろいろな矛盾を受け入れていますのよ。不思議なくらい、これが素敵なのです。宇宙の起源のように、これが綺麗なの」 「よくわかりません」 「そう……それが最後の言葉に相応しいわ」 「最後の言葉?」 「その言葉こそ、人類の墓標に刻まれるべき一言です。神様、よくわかりませんでした……ってね」 +++++++++++++++ 欠けているには僕らの方ですよ。欠けているからこそ、人間なんてものを意識して、子供に教えて、やっきになって守ろうとする。愛情とか道徳とか博 愛みたいなルールを作って、補おうとしている。 欠けているのが人間だ、なんて言う人がいますけれどね、それも違う。 多いもの、大多数のものが正しいというエゴに過ぎません。 +++++++++++++++ 質問は、質問する人を表現するんだ。それに対する返答なんかとは無関係にね。 +++++++++++++++ 最初は計算、 次は実証、 これを繰り返し、仮想のモデルを組み立てる。 そして、ついに源泉に到達する。 そうなれば、最後は一般への展開です。 +++++++++++++++ 「人類史上最大のトリック……? それは、人々に神がいると信じさせたことだ」 +++++++++++++++ 「そんな人間になってほしくない、なんて言い方は、私の人格の独立に対して失礼です」 +++++++++++++++ 他人に干渉するな、と要求することは、そういって、他人に干渉している。 +++++++++++++++ 成功者、賢人の書を読むことは、もちろん有用だけれど、そこにある言葉や、具体例に目を奪われてはいけない。 具体的なもの、つまり目に見える「象」を排除して、内に隠れているコンテンツを掴み取ること、 これ以外に万能のノウハウはない。 抽象すぎてわからない? それがもう勘違いである。 抽象的だから理解できるのだし、具体的すぎてわからないものが多すぎるのだ。 +++++++++++++++ 「これからは君たちの時代だ」 と言う老人にならないようにしよう。 +++++++++++++++ 何か作られたものに一本化しようとする。 そうじゃないものを排除しようとする。 そういうのって、一言でいうと「貧乏」。 +++++++++++++++ 何かに悩んでいる人は、解決策を知らないのではなく、最良の解決策を面倒でしたくないだけだ。 +++++++++++++++ 方角はどちらであれ、向いている方へ進めば、その人にとっては「前進」だ。 +++++++++++++++ 素敵な孤独を感じることができるのも、 他人が存在するおかげである +++++++++++++++ +++++++++++++++ 「165に3367をかけるといくつかしら?」 「55万…、5555です。5が六つですね」 「どうして、そんな計算を?」 「貴女を試したのよ。計算のできる方だと思ったから…」 「でも、7のかけ算が不得意のようね。今、最後の桁だけ時間がかかったわ。何故かしら?」 「別に不得意ではありません。7は好きな数字です」 「いいえ、貴女は気がついていないのね。初めて九九を習ったとき、貴女は、7の段が不得意だったはずよ。7は特別な数ですものね。」 「数字の中で、7だけが孤独なのよ」 「1から10までの数字を二組に分けてごらんなさい。そして、両方とも、グループの数字を全部かけ合わせるの。二つの積が等しくなることがありますか?」 「ありません」 「片方のグループには7がありますから、積は7の倍数になりますけど、もう片方には7がないから、等しくはなりません」 「ほら、7だけが孤独でしょう?」 「私だけが、7なのよ…。それに、BとDもそうね」