笹塚さんが、そんな人だなんて、思わなかったよ。
あたしは今、後ろ手に縛られている。
ここは、どこなんだろう…どこかマンションの一室だ。
昨日の夜、事務所から家に帰ろうとしていたあたしに、近付いて来た一台の車。それが、笹塚さんだった。
いつものように、家まで送ってくれるものだと思っていた。
なのに…。
「弥子ちゃん、気軽に男の車に乗ったりしちゃ、駄目だよ」
笑いながら、笹塚さんは言う。
あたしの手を掴んで、ねじり上げて…。
笹塚さんの顔が、至近距離にある。
「笹塚さん…」
目を合わせる事が出来ない。
顎を掴まれて、唇を指でなぞられた。
あたしは思わず目を閉じる。
煙草の匂いが鼻先に漂ってくる。
やだっ。キスされる!
「フッ…」
笑いとも、溜め息ともつかない声がして、笹塚さんは離れて行った。
*****
それから、右手を手錠で固定された状態で、放置されている。
お腹が空いた…。
あたしったら、何考えてる?
事務所に行かないと、ネウロは心配するだろうか?
あたしなんて、居なくても平気かなぁ…。
だとしたら、凹むんだけど。
続く→