愛情の1/1000000
―皇様より相互記念―

 それがいけなかったか、びくんと身体を震わせたかと思うと目を固く閉じられてしまった。


 分からない



「弥子…我が輩は―」



 どうしたら良いのか


 上着をそのままに弥子から離れる。
 それさえも拒否をされるかと思っていたが、意外にも弥子は我が輩の上着を力強く掴んでいるようだった。

 我が輩だけが触れる事が出来ない。
 その事に何故か焦燥感を感じた。



「貴様に泣かれるのは慣れていない、泣くな。」

「…んで」

「…?」

「なんで、いきなり優しくなんのよ…っ」



 声は震えたままだが、半ば叫ぶように我が輩に向かって怒鳴り散らす弥子。
 だが、我が輩にはその言葉の意味を半分も理解が出来ない。



「分かるように話せ、貴様が何を言っているのか理解不能だ。」

「分からないのはこっちだよ!何で、いきなりあんなことして…っ」



 思い出したのか、再び震えてうずくまる。
 それ程の恐怖を感じていた事は、我が輩にも少なからず理解出来る。



「そんなに…恐怖を感じていたのか?」

「当たり前でしょ!あんなことされたら、誰だって怖いに決まってるじゃない!」

「そう、なのか」

「…本当に、分からないの?」



 疑わしげな声色での問いかけに肯定を示せば弥子の顔から先程までの恐怖に歪んだ表情が消え、驚愕の表情のみが残った。



「…そっか、魔人だもんね…。」



 そして驚愕の表情も次第に安堵の笑顔へと変わり、我が輩へと笑顔を向けて来た。
 あはは、と笑いながら乾き切らなかった涙を拭う姿はいつもの弥子だった。



「そうだよね〜、あんたが本気であんなことする訳無いよねぇ。」

「まったくだ、ほんの戯れに決まっているだろう…ウジムシめ」

「…なんで私こんなに偉そうにされてるんだろう…。」



 いつも通りのやり取りを行いながらも、諦めたように我が輩から離れて服をどうしようか悩んでいる弥子の後ろ姿を見て、得も知れない虚無感が通り過ぎるのを感じていた。

 今日、湧いた疑問が解ける日が来れば、この虚無感の居所も解るのだろうか…。



「…くだらないな。」

「へ?何が?」

「そのように貧相なものを隠す必要など無いだろう。」 

「うん…確かに貧相だけどね…。」



 我が輩から人間に歩み寄ろう等と我ながら堕ちた物だと笑い飛ばして、困惑する奴隷をからかいにソファから立ち上がった。

 哀れみを感じたことを
脳髄の記憶から消去するように…。

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皇様、素敵なお話をありがとうございます!



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