「…暇ね。」
そう、ポツリと呟いたのは我が奴隷弥子。
ソファの上に寝転んで嗜好品を食らいながら、地上で今や知らぬ者は居ないと言う程の人気を有するTVドラマを気だるそうに視聴している。
見るからに恋愛物のそれは、色恋にも色気にも縁の無い奴隷の食指を動かす事は出来なかったようだが、起承転結に基づいた物語構成と音と映像により、少なからず気を紛らわす事は出来るようだ。
事実、恋愛物王道の山場であるキスシーンやらに反応して一瞬動きを止める様子も見られた。
そう思えば、大した謎も含んでいない単調なばかりのニュースを見ているよりも、この奴隷の動きを見ている方が幾分か楽しい。
「全くもって遺憾な事だが喜べ、今日は謎を持つ依頼も0だ。」
「普通は嬉しい事だけど…素直に喜べ無いわ。」
「我が輩としても何処にも喜ぶ要素は無いがな」
暇と言う物はどうしても思考力を鈍らせる。
(いかんな…。)
終いには欠伸を噛み殺す羽目になる程に集中力も途切れた。
直接【謎】に関係していない雑務の残りはあかねに任せる事にし、仕事を早々に終わらせて席を立つ。
ふと奴隷を見れば起き上がってはいたが、いまだに「人間として事件が無いのを喜べ無いのはどうなんだろう」…などとブツブツと呟いている姿が目についた。
特に興味も無いが、奴隷の横の開いたスペースに座り、既に飽きてしまったのか雑誌を読み始めた奴隷の代わりとばかりにドラマとやらに目を向けてみる。
やることが無くて暇を持て余しているのは我が輩とて同じだ。
暫く見ていれば、人間の男女が裸体で重なり合う場面が映し出された。
もちろん規定に従いあくまでシーツやらで姑息に隠してはいるが、これは人間同士の交尾の暗喩だろう。
我が輩が未だに知識としてしか知らない人間の相手を【愛する】と言う行為の一つだ。
「ふむ…。」
横を見れば、半分夢の世界に落ちかけているウジムシの姿が目についた。
おそらく、テレビの画面内で行われている事など既に見えていないだろう。
そういえばコイツも立派に雌だったなという思いがよぎる。
「弥子。」
「うぁっ?!へ、何、ネウロ?」
続く→