1年の計は元旦にあり
―ペリエ様より相互記念―
1年の計は元旦にありとは言うけれど。
朝一番に、おせち料理とお雑煮を食べようと早起きして、せっかくの元日だからとお母さんが娘時代に着た赤い振り袖を着付けしてくれて、元日のテレビ番組も羽織袴の芸人のコントバラエティで始まって、こたつでお雑煮のお餅に箸を付けた所で。
いきなり鳴った、玄関のインターフォン。
「ヤコ〜、ちょっと出てくれない?今手が離せなくて・・・」
「ええ〜??」
なんてタイミングの悪さ。これから今年最初の食べ物を食べようとしている時に。
しかも、何か嫌な予感がするのは何故だろう・・・?
渋々ながら玄関に出て、玄関のドアを開けたら。
「ヤコ!初詣に行くぞ!!」
目を糸の様に細めたアルカイックスマイルの、背の高い魔人が玄関に立っていた。
「は・・・?」
・・・元日早々、しかもまだ午前中に、相変わらず青いスーツを来たネウロがウチに来て、しかも開口一番なんて言いました?
「あらぁ!助手君じゃ無いの!!」
「明けましておめでとうございます!お母様!!」
玄関に出てきたお母さんは、ネウロの姿を見るなり手を合わせ歓迎ムードなのに対し、私は一気に気分が落ち込んだ。
新年早々、いきなりネウロがウチにやってきたと言う事は、間違いなくおせちとお雑煮、食いっぱぐれると言う事で・・・。
そう思って溜息を吐いたとたん、いきなりネウロに肩を掴まれ引き寄せられて。
「お母様!先生と初詣に行きたいんですが、先生をお借りしてもよろしいでしょうか?」
助手モードで胡散臭いまでの笑顔のネウロに、お母さんは満面の笑顔で頷いて。
「もちろんよ〜!こんなので良ければ、どうぞ連れて行ってやって下さいな!」
「はい!では遠慮無くお借りします!!」
「え?ちょ・・・!お母さん!ネウロ!」
慌てる私に構わず、ネウロに引き摺られて家を出たのが1時間前。
ネウロに強引に拉致られて、私は都内の有名な神社に来た。
参道を埋め尽くす初詣客の凄い人ゴミ。やっぱり元日の初詣って込むんだね。
寒さに首を竦めてミンクのフワフワの襟巻きを締め直したら、後ろからその人ゴミにいきなり押された。
「わぁ!」
着馴れない振り袖。大きな花柄の赤い振り袖は可愛いけど、洋服とは歩き方も立ち振る舞いもずいぶん違う。
馴れない草履も手伝って、そのまま地べたに転びそうになった私の腕を掴んだのは、いつもと変わらない青いスーツのネウロ。
「貴様は今年も踏みつぶされるミジンコのままか?」
「何それ!?・・・もう・・・」
私はぶつぶつ言いながら、ネウロの腕に縋って体勢を立て直す。
振り袖って全身に巻き付ける様に着付けるから、凄く胸元がきついし、脚裁きが大変。
しかも草履だけはおニューだから、鼻緒が固くて足が痛い。
人ゴミは凄いし、全然前に進まないし、足は痛いし、お腹は空いたし。
元旦早々、またネウロに振り回されてるなぁ・・・。
ふと、何でネウロがいきなり初詣に行こうって言い出したのか聞いていない事を思い出した。
「ねぇ。何でいきなり初詣?アンタが神様を信じているとは思えないんだけど?」
「確かに、貴様らのいう神は信じてはいないが・・・」
ネウロは私を見下ろして深緑を細めた。
「1日の計は朝にあり、1年の計は元旦にあり、と言うでは無いか」
「え?それって、計画を立てる為のことわざでしょ?」
それと初詣は、なんの関係があるんだろう??
「・・・我が輩も地上に来た以上は、貴様らの流儀に従ってやろうと思ってな」
「ふぅん?」
まぁ、コイツは何でも形から入りたがる所があるけど、初詣もそんな感じなのかな?
そんな事を思いながら、私は帯で締め付けられる胸元を押さえて溜息を吐く。
ま、いっか。せっかく初詣に来たんだ。
甘酒、お汁粉、豚汁、お好み焼きの屋台もあるし、お正月らしく着物も着たんだし。
そうして更に1時間後、ようやくお賽銭箱の前に着いて、私は5円玉を投げて柏手を打つ。
一瞬ちらりとネウロを見て、私は目を閉じてお願いする。
今年は、このドSエロ魔人と、少しはまともな精神的な繋がりが持てる関係になりますように。
どうぞよろしくお願いします。神様。
ふと顔を上げて隣のネウロを見ると、ネウロは賽銭箱の前に立つだけで、柏手も打たないし、お願い事もしていないみたいだ。
・・・どこが人間の流儀に合わせているつもりなんだろ?
相変わらず何を考えているか分からないネウロの深緑に、私はそっと溜息を吐いた。
ああ。足が痛い。ちょっと靴擦れしたかも。この場合は草履擦れかなぁ・・・?
「さて行くか」
「え?どこに?」
人ゴミに流れるように神社の階段を下りながら、ネウロは私の帯を巻いたウエストを掴んだ。
「事務所で姫始めだ」
「はぁっ!?」
ネウロの言葉が終わると同時に、私はネウロに腕を掴まれて、そのまま人ゴミから連れ出された。
訳が分からないまま再び拉致されて、どさりと事務所のソファーに下ろされて、間髪入れずにネウロは目の前に迫って来た。
迫る深緑は、新たな年を迎えても・・・変わることが無いくらい綺麗で。
一瞬その深緑に見とれた私の隙を突くように、ネウロは唇を重ねた。
「ん・・・!ちょ・・・ネウ・・・!ん!!」
冷たく濡れた長い舌が唇の間を割って、私の言葉を飲み込む様に深く絡んできて、私はそのまま圧し掛かってくるネウロに押し潰されそうになって。
ネウロの掌がそのまま着物の裾を割ろうとするのに、私は慌ててその手を掴む。
「駄目だよ・・・!私一人じゃ着物着れないんだから!!脱がせちゃ駄目!!」
ネウロは鼻を鳴らして、ソファーに押し倒したままの私を見下ろして。
「せっかくの和服なのに帯を解けんとは・・・つまらん」
「・・・アンタ・・・もしかして、私が着物着てるの分かっててウチに来たでしょ・・・?」
十分あり得る。ネウロの事だから、テレビの時代劇みたいに、着物の帯をあ〜れ〜くるくるっ・・・てしたかったに違いない。
「日本古来の文化を堪能したいと思って何が悪い?」
「やっぱり・・・」
このドエロ魔人は・・・。
呆れて溜息を吐いた所に、ネウロは鼻を鳴らして起き上がって、私は安堵にホッと息を吐いた。
良かった。着付けが乱れてたら、お母さんになんて言い訳すれば良いのか分かんないもんね。
と、思ったのもつかの間。いきなりウエストを掴まれ、そのまま着物の裾を割られてネウロの膝の上に正面から乗せられた。
「え・・・?ネウロ・・・!?」
「要は、脱がさねば良いのだろう?」
言葉と同時に、ネウロの黒革手袋に包まれた指が、裾を割って太腿を這い回って。
「や・・・!んぅ・・・!!」
むず痒く這い回る掌に思わず身を竦めると、着物の襟を軽く開いて、濡れたネウロの唇が首筋に落とされた。
「あ・・・!んぁ!!」
「相変わらず感度は良いな」
ネウロは楽しそうに耳元に唇を寄せて低く囁いた。
「アンタはっ・・・!年末も散々『事納め』って言って盛ったくせに・・・今年も新年早々から盛りっ放しなんだからっ・・・!」
体中をまさぐるネウロの手に息を切らして、私はネウロを睨んだ。
「初詣に行った意味も分かんないしっ・・・最初からこうする気なら、あんな人が多い神社に行って人ゴミに揉まれるなんて手間掛けなくとも・・・」
「ほう?人間の女は事に及ぶ前に手間を掛ける事を好む筈だが、貴様はその手間さえも惜しくなったのか?」
「〜〜っ!そうじゃないけどっ・・・!馴れない草履で足が痛いんだってばっ!」
腰に腕を回して抱き寄せてくるネウロの肩を、せめてもの抵抗で押しながら私は喚く。
「足が痛いのか」
ネウロはそう言ったかと思うと、いきなり私の足首を掴んで引き摺り上げた。
「ふぎゃっ!?」
ソファーの上で仰向けに引き摺られて、足首を掴まれて着物の裾が乱れて太腿が晒されるのに、私は慌てて手で裾を押さえる。
「ふむ・・・裾の中身が見えそうで見えないのは、なかなかそそられる物があるな」
ネウロは笑いながらそう言うと、私の爪先の足袋を摘んで引っ張った。
「わぁ!?」
爪先から足袋が脱がされ、裸足の足がネウロの前に晒されて。
少し擦り剥けた、足の親指と人差し指の間。
ネウロは深緑を細め、目を見開く私の目の前で、見せつけるように薄い唇から舌を踊らせて。
冷たく濡れた舌が、指の間に触れた。
「ひぁ・・・!?ああぁ!」
ひりひりする痛みとむず痒く這い回る舌先に、目を見開いて爪先を強張らせて。
ぴちゃぴちゃと水が鳴る音と、指の間をぬるりと辿る舌。
時折軽く立てられる歯に、脚が、体が勝手にびくりと跳ねて。
「やだ・・・!ああっ・・・んぅ!!」
脛から膝をゆっくりと撫でる黒い掌に、私は息を弾ませて。
「貴様はどこかしこも性感帯だな」
喉の奥で嗤うネウロの囁きに、私は震えながら首を横に振った。
「やだ・・・ネウロ・・・!」
「既に肌が汗ばんで熱い。貴様は今年も淫乱で始まるのか」
「アンタに言われたく無い・・・!あっ・・・やあぁ!」
太腿を這い上がる掌と、ゆっくりと足先から膝の内側をなぞるネウロの濡れた舌から感じる甘痒さに、私は目をぎゅっと瞑って息を震わせた。
「ヤコ」
名前を呼ばれて目を上げると、すぐ目の前にネウロの深緑が私を覗き込んでいた。
「貴様は今年は、どのように進化するのだ?」
「え・・・?」
ネウロは私の膝を割ってその間に体を割り込ませる様に体を屈めて。
「1年の計は元旦にあり。貴様の今年の進化の目標を聞いておこうか?」
「今年の進化の目標って・・・」
ネウロは着物の裾から手を差し込んで、下着に手を掛けながらそんな事を言う。
いつも思う。コイツは何でこういう時に、そんな難しい話をし出すのか。
「もう・・・そんな話って今する事なの・・・!?」
「今だから出来るのだ」
ネウロはあっさり下着を抜いて、私の脚の間に指を這わせた。
「んぁっ!!」
「カトンボの様に空でも飛んでみるか?それとも土竜の様に土を掘って潜ってみるか?」
「い・・・意味分かんな・・・あああっ!!」
「今年は、我が輩の望む様に進化して貰わんとな」
「や・・・ああぁ!!」
ぐちゅ、と水の音が大きく鳴って、私は悲鳴を上げる。
「この・・・ドSエロ魔人・・・!!」
「淫乱の雌豚に言われてもな」
ネウロはそのまま着物を袂を広げようとして、私は焦って止める。
「駄目・・・!脱がすのも汚すのも絶対駄目・・・!!」
「ちっ。ならばこれでどうだ?」
いきなり腕を掴まれて起こされて、私はネウロの膝の上に抱え上げられて。
何の予告も無しに、いきなりネウロの猛った欲望が最奥を貫いた。
「ああああぁ!!」
いきなりの衝撃に、私は悲鳴を上げてネウロの胸にしがみつく。
「なにいきなりっ・・・!ああぅ!!」
「・・・今年は予想だにしない事が多いかも知れんな」
「なにが・・・んんっ!!」
ネウロが覆い被さるようにキスしてきて、私は挿入の衝撃で涙の浮いた目でネウロを睨む。
ねっとりと舌を絡められ、飲みきれないお互いの唾液が顎を伝って振り袖の赤い生地に滴って。
「ヤコ。我々は昨年以上に強く繋がらねばならんぞ?」
「ネ・・・ウロ・・?」
「シックスという強敵も現れた。貴様も進化しているとは言え、今だ亀の進化のごとく遅い」
唇の擦れ合う距離で囁かれ、私はネウロの細められた深緑を見つめた。
「初詣とは、1年の縁起を担ぐ為にする事。姫始めとは、今年一年つがう相手と精神的に繋がる為に行う交わりだそうだ。今年は色々波乱の年になりそうだからな。魔人の我が輩も、人間の流儀に合わせて、縁起を担いでみようと思ったのだ」
「ネウロ・・・」
ネウロは深緑を細めて私の腰を掴んで。
「ヤコよ。今年は昨年以上に貴様の力が必要だ。だからもっと進化しろ」
「ネウロ・・・」
ネウロの言葉に思わず頬が熱くなる。
精神的に繋がることが大事だと、必要だと言われる事が、もの凄く嬉しくて。
期せずに神様にお願いしたことが適って、私はネウロの深緑を見つめ。
おずおずとネウロの首に腕を巻き付けて、私はこくりと頷いた。
「うん・・・努領するよ。ちょっとでもアンタが望む進化が出来るように・・・」
ネウロは深緑を細めて、ゆっくりと唇を吊り上げた。
「よろしい・・・」
そのまま唇が降りて、深く口付けられて。
下から強く突き上げられて、私は悲鳴を上げた。
「んぁ!!あ、あああ・・・!!やああ!!」
「ヤコ・・・」
いつの間にか、首に撒いていたミンクの襟巻きは床に落ちて。
赤い花柄の振り袖は、文字通りネウロの律動に合わせてヒラヒラ揺れて。
着物の胸元は淫らに肌蹴られて、何度も唇が胸元を這って。
「ネウロ・・・!!やあああぁっ!!や・・・駄目・・・あああっ!!」
ネウロに強く揺さぶられ、私は追い詰められる甘く熱い快感に、ネウロに縋ってあられもなく泣き叫んだ。
一際強く突き上げられて、私は喉を強く反らせてネウロにしがみついて。
「やぁああっ!!」
「ヤコっ・・・!」
どくりと熱く激しく、最奥で白い花火が弾けた。
「あ〜もう・・・結局脱がされるのと変わんないじゃん・・・」
私はソファーの上で転がりながら溜息を吐く。
せっかくお母さんが着付けてくれた着物は皺だらけ。帯も歪んでるし、裾も襟も中途半端に広げられて、我ながら恥ずかしい姿になっている。
ネウロはいつの間にかトロイの上のパソコンの電源を入れて、黒革張りの椅子で踏ん反り返っている。
「脱がなくても、そちらの方がなかなかにそそられる姿ではあるな」
「・・・このドSエロ魔人・・・!」
私は顔を真っ赤にして、ソファーの上で正座する。
「せっかく着物着て初詣行ったのに・・・事務所とアンタとこうしているのは去年と変わらないじゃん・・・」
ネウロは目を上げて私を見て。
「それでは困る。今年は貴様は我が輩の役に立つよう、進化して貰う約束をしたのだからな」
「・・・そういう意味じゃないってば」
私は溜息を吐いて事務所のキッチンに向かう。
確か、何かあった時用に簡単な着替えがあったはず。
着物の帯締めを緩めながら、私はネウロの言葉を思い返す。
姫始めとは、新年最初にHするだけの意味じゃ無かったんだ・・・。
ネウロの言葉は、はからずとも私が初詣で神様にお願いした通りで。
それは・・・確実な精神的な繋がり。
ネウロが私をつがいと思ってくれている事が嬉しいから、今年も私は何だかんだとネウロの探偵役を続けて行くんだろうな。
帯を解いて振り袖を脱ごうとしたら、いきなり後ろから私を抱き抱える長い腕。
「うわぁ!?」
「ヤコ。脱ぐなら我が輩が脱がせてやるぞ?」
「ちょ・・・・!!誰のせいで脱ぐはめになったと思ってんの!?」
ジタバタと暴れて抵抗するけど、後ろから顎を掬われてネウロの唇が降ってきて。
そのまま深く深く唇が合わされる、長く濃厚な口付けに、私は思わず力を緩めた。
ああ。今年もこんな調子なんだな・・・。
ネウロのキスを受けながら思っていたら、ネウロの前髪の一部がふよんと揺れて。
「む。新年早々幸先が良いな。謎の気配だ」
「へ?」
ネウロは私の体に巻き付けていた腕を解くと、大きな手で頭を掴んで。
「行くぞ。気配は近い」
「ちょっと・・・!!まだ着替えてないのに!!」
「そのままでも構わんではないか」
「構うよ!!この馬鹿ネウロ!!」
私は必死でネウロの腕を解いて、キッチンに置いておいた服の紙袋を開いて。
「1分で着替えるから待っててよ!」
「30秒だ」
「出来るか!!」
私は脱ぎ捨てるように着物を脱いで、紙袋のセーターを被る。
・・・やっぱり今年もこんな調子だ。
私は着替えながらそっと溜息を吐いて、神様にお願いし直す。
初詣の神様。もし適うなら、今日のお願い事を修正させて下さい。
精神的にネウロと繋がる前に。
今年はこのドSエロ魔人の自分勝手な俺様具合を、少しでもまともにして下さい・・・。
ペリエ様、素敵なお話をありがとうございます!
戻るか?