それは、幸せな
―笑子様より相互記念―

ネウロ、服の袖を引っ張りながら名前を呼んだ。そしたら優しいキスを一つくれる。そうしてヤコ、甘く低い声であたしの名前を口にした。ネウロがこうやってあたしの名前を呼ぶ時は、優しくあたしを触る。だからあたしもそれと同じくらい、いや、それ以上に暖かくあんたに触れるのだ。
こんな時間がただひたすらに続けばいいのに。

「ヤコ」
「なあに」
「貴様はいいにおいがするな」
「そう?ありがと、嬉しい」
「思わず顔を埋めたくなる」
「や、ちょっ、くすぐったい」
「我輩は気持ちいいのだが」
「そっか」
そう言って、ぎゅうっと抱きしめる。体温なんてないはずのネウロの体が、妙に心地良く感じた。ネウロ、ネウロ。何度も名前を、あたしが出来る最大限、優しく呼ぶ。
「今度どっか行こっか」
「どこがいい?」
「あんたと一緒ならどこでもいいよ」
「我輩もだ」
「じゃあここにいよっか」
「ああ。…ヤコ。」
ネウロの手が不意にあたしの頬に寄せられる。
「ん?」
「好きだ」
「ばかね、あたしもだよ」
「知っている」
「ネウロ。そんなこと、あたし以外の人に言わないでね」
「当然であろう」

笑いながら口にしたそれらの言葉がひどく甘い。きらきらしていて、まるで飴みたいに光る。食べてしまう気にはなれないけれど。窓の外ではもう初夏を告げる蝉が鳴く。うるさいくらいの音がちょうどいい。あたしはネウロが好きだと言ってくれたあたし自身を大切にしたいと思う。ネウロ、こんな気持ちは初めてだよ。
あたしが死ぬか、あんたが魔界に帰るか。その最後の時まで、ずっとずっと隣に居られたなら。


(あんたじゃないとあたしは幸せになんてなれないのよ!)


笑子様、素敵なお話をありがとうございます!



戻るか?