「ふぇあっ!?」
目の前のネウロから引っ剥がされて、少し離れたアスファルトにべちゃっと放られた。
「痛……」
「愚かにも程があるぞ、ゾウリムシめ」
「ふぇ?」
振り返ると、目の前には青いスーツの魔人。その向こうにもう一人、青いスーツの……。
「あーあ、惜しかったなぁ」
向こう側のネウロが、形を崩していく。そうして現れたのは、ぶかぶかの青いスーツを着た、怪盗X……。
「偽探偵も、精神的に追いつめれば、こんなに簡単に騙せるんだね。ちょっと面白かったよ」
くすくす笑う、無邪気な少年。
え、じゃあ私……、Xに抱きつこうとして、た、の……?
自分の愚かさと、あのまま赤い箱にされていたかも知れない恐怖に、背筋が凍るほどの戦慄。
ふと上を見上げると、明らかに不機嫌なネウロの顔。それでも、いや、不機嫌な顔だからこそ、本物のネウロがそこにいると、安堵した。
「さて……我が輩の所有物で遊んだ見返りを貰わんとな」
「見返り? 俺なにあげればいいの?」
怒ってるネウロを更に挑発するXのからかうような笑み。しかしそれは次の瞬間、苦痛に悶絶する顔に変わる。
「お仕置きという名の見返りだ」
その一言を合図に、ネウロの拳がXの鳩尾に入る。一方的にやられっぱなしのX……もしかして、ネウロは手加減なし……?
「がふっ……ちょ、ま……ぐぁ…ぐっ……」
最後は、ネウロがXを掴んで、遠くへ放り投げた。完全に姿が見えなくなったのを見届けて、ネウロは私の方へと振り返った。
「貴様……我が輩の偽物を見抜けなかったばかりか、抱きつこうとまでするとは……」
「ネウ、ごめ……ごめ、な、さ……」
怒ってる。すごく怒ってる。無理もないけど、すごくすごく怒ってる。でも、怒ってるのは本物である証拠であって。
私が震えて泣いているのは、怖いからなのか、嬉しいからなのか。
「ネウロ……!」
腰が抜けて立てないけど、必死にネウロを求めて手を伸ばした。その手は、意外なほど優しい温もりに包まれて。
「このミジンコが」
そう言いながらも、握り返してくれた手を引っ張って、私を抱き寄せるネウロ。
「我が輩以外に身を委ねるな。二度はないぞ」
脅すような口調なのに、その唇は柔らかく、温かく、そっと私の唇に触れて。
そこが路地であることも忘れて、私達は強く抱きしめ合った。
++ fin ++
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