泣いちゃいそうよ

「…………」
 ネウロは依頼人の娘さんとなにやら話し込んでいる。今いるホテルの支配人さんが、今回の依頼人。『謎』は造作もなく解かれ、アフターケアに勤しんでいるところなのだ。
 とっても大事なことなのは解る。だけどいつもは、それは私の役目で、ネウロはさっさと帰ってしまうのに。

「あの……探偵さんを放ってこちらへいらしても大丈夫なのですか?」
「いやはや、こちらのことはお気になさらず」

 大丈夫じゃな――いっ!!

 なんて、叫べたらいいのに。でも、ワガママ言ってネウロをこっちへ引き寄せても、きっと軽くあしらわれて向こうへ行ってしまうんだろうな。だって、今喋ってるネウロ、何だか楽しそうなんだもん。

 私、ここにいなくても、いい……?

 もやもやする。解ってるよ、やきもちなんだよ。私の心が狭いだけだよ。……私ばっかりネウロを好きで、苦しい。
 とにかく二人を視界の外へ追い出したい。でも、見えないところで二人が何かしちゃうのもイヤ。

 私の胸を、絞め殺す気?

 息が詰まる。ネウロはいつになく、娘さんに対して好意的に接している。いつもの助手モード以上に、紳士で、楽しそうに笑って、積極的で。ちょっと目が潤んできた。

「……先生?」

 突然耳に入ってきた声に、はっと我に返る。いつの間にか、二人がこちらへ寄ってきていた。

「探偵さん、本当にすごいですね」
「ええ、先生は人間の常識という壁をいとも簡単に突き破ってしまうのです」
「目の前で見ても、信じられないくらいよ」
「では、例のものをよろしく……」
「ええ」

 例のもの? 内緒話なの?
 気づけばなんだか、娘さんが私をしきりに見てる。上から下まで舐め回すように。

「何? 何の話……?」

 あ、声が震えている。きっとネウロに気づかれた。

続く→



戻るか?