全部抱きしめて

 ヴァレンタインデーという、人間共の行事。端から期待などしていなかった。地上の物質を喰わない我が輩に、よもやヤコがチョコレートを用意しているなど、考えてもみなかった。メインが包装紙の『謎』であったなど、そこまでヤコが気を回すなど、まったくもって予想外だったのだ。

 ああ、これが、諦めていたものが手に入ったときのどうしようもない幸福感、というものか。

「ヤコ」
「ん?」

 テラという男と遭遇し、一悶着あった後のことだ。ヤコの家へ二人で向かう道すがら、確信はしているが、それでもやはり聞きたいことというのはあるもので、それを素直に言葉にした。
「我が輩によこしたアレは、貴様の本命チョコとやらだと受け取って良いのだな?」
「……う、うん……何よ今更、恥ずかしいじゃん……」
「フ……その恥じらっている様は、我が輩を誘っているのか?」
「なっ……そ、そんなん……」
 ヤコは頬を朱に染めて俯いた。期待通りの答えに、思わず頬が緩む。外交とはいえ、他の男に愛嬌を振りまいていたあの不愉快な時間を、帳消しにしてやっても良いくらいだ。

「……ネウロ、あのね」
「何だ?」
「今日はずっと……、お母さんも美和子さんも、家にいないの……」

 ……本当に誘われるとは思っていなかった。今日は予期せぬ幸福がよく舞い込む。
 我が輩は歩いてる時間さえ惜しくなり、ヤコを抱えて空を駆け、家路を急いだ。

 玄関から上がり込み、ヤコの部屋へ入ってすぐ、抱きしめて唇を奪った。ああ、我が輩はこんなにも我慢の利かない生物だったか。

「ん……あ、はぁ……ネウロ、そんな…急がな、くてもっ……」
「路上で襲わなかっただけありがたいと思え」

 そのままベッドに組み敷いて、ヤコの体をまさぐる。ワンピースを脱がすのが面倒で、裾から胸までたくし上げたところで固定した。
 露わになった肌に、所有の印をいくつも刻む。身を捩るヤコを抱き寄せ、ブラジャーの隙間から舌を差し込んだ。

続く→



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