「……ねうろ、今日はもう帰ってもいい?」
力無く弥子が尋ねる。ネウロは不満そうな顔をしながらも、帰れ、とだけ言った。
事の始まりは弥子の告白からだった。
「ネウロ……あ、あのね……」
「何だワラジムシ」
少しばかり恥じらいを見せる弥子に、本を読んでいたネウロは視線すら動かさず、返事だけをした。
「ちょっと! こっち向いてよ!」
弥子は本を無理矢理ぶんどって、両手でネウロの頬を包んで、自分の方を向かせた。
「何だというのだ。我が輩の読書タイムを削ってまで報告するほどの重要事項か」
「…………うん」
「ならばさっさと言え」
「私、ネウロが好き、なの……」
顔を紅潮させて俯きがちな弥子に対し、ネウロは一瞬きょとんとした顔を見せた。
「…………そうか」
「そ、そうかって……」
「奴隷が主人を愛するのは義務だろう」
「そうじゃ、なくって!!」
さらりと言い放つネウロに、弥子は悲しくなって大声で反論する。
「……恋愛感情、というやつか」
「そうだよ!」
「くだらん。魔人の我が輩に恋をするくらいなら、同じ人間の笹塚辺りにでもした方が、よほど貴様にとって有益なのではないか?」
拒絶されたばかりか、他の男を薦められるなんて。伝わらないかも知れないとは思っていたが、こんな仕打ちは予想していなかった。彼女の表情は絶望そのものだった。
続く→