眸の中の小さな太陽

 それはヴァレンタイン前日だった。

「げ。なんでこんなとこにいるのよ」
「フム……今まさに『謎』が生まれそうなくらい殺気に満ちあふれているのでな。何事かと足を運んでみたのだが」
 今いる場所は、デパートのヴァレンタイン特設会場。大勢の女の子達が、いろいろあるチョコを見比べて、真剣に悩んでいる。確かに、私でも解るくらい殺気立ってはいる。

「して、貴様はここで何をしている?」

 こいつ……解ってて聞いてるのかな。この時期に女の子がチョコ売り場にいるなんて、目的はたった一つじゃない。
「ぎ、義理チョコ……お世話になってる人にあげるの」
「……そんなにたくさんいるのか」
「う……これは……自分用……」
 特設会場では、普段そこらの店には出回らないような高級チョコレートも売っている。それをお手軽にゲットできる数少ない機会なのだ。

「貴様の本命チョコとやらは、貴様の胃袋に捧げるのか……淋しいことだな」
「い、いいじゃない! どうせ本命チョコあげる人はっ……」
 勢いで言いかけて、慌てて口を噤んだ。一瞬、ネウロの目が大きく見開かれたのを、見てしまった。

「フン……せいぜいあがくがいい」

 くるりと踵を返し、すたすたと長いコンパスで去っていった。不機嫌に見えたのはきっと気のせいじゃないのだろう。

 誤解、されたな、これは。


 翌日。ヴァレンタイン当日。
 学校が終わって、いつものように事務所に急いだ。誤解されているなら、それを一刻も早く解いてしまいたい。
 事務所の扉の前に立つと、中からネウロの声が聞こえた。会話調だから、多分あかねちゃんと話しているのだろう。


「フム……まあそうなのだ。チョコレートなどよこされても迷惑なのだが……」

「そうだな……」

「しかしその場合、我が輩はヤコを必要としないかも知れん」

「フッ……アカネ、貴様の方がよほど我が輩を理解しているようだな」


 ――何? この会話の流れ……。
 私が迷惑、どころか、あかねちゃんの方がいい、の?

続く→



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