「ごめんっ、遅くなっちゃっぎゃああぁぁ!!」
事務所に駆け込むと、遅れてきたことを理由に、嬉々として私を虐げるネウロ。もはやまったくもって日常の風景だ。
「ああ、もう……いつものこととはいえ……もうちょっとレディを優しく扱ってよね」
「何を言う。我が輩はいつもレディ〜〜〜として扱っているではないか」
「何処がよ!!」
ネウロの傍若無人な発言にツッコむ。これも至って日常。
諦めて、ソファへ座って鞄をテーブルに置く。すると、ソファを隔てて背後にネウロがやってくる。そっと後ろから抱きしめられて。
「ヤコ」
「ん?」
無理矢理上を向かされて、唇が重なる。触れるだけのキス。でもそれだけじゃ済まなくて、ソファに座り直して、深く口づける。それもいつものことで。
「……はぁっ……」
「ヤコ……」
ぎゅっと抱きしめられて。ああ、今日も流されちゃうのかな。
「なんか、私の日常、日々浸食されてるよね……」
「む?」
「最初はこんなの、すごくドキドキして、もう心臓が破裂するかってくらいで、その後家に帰ってもなかなか眠れなくて……」
「ほう……今はこれが些細なこととなり、ぐっすり眠れる、と」
「それもちょっと違うかな……」
「では何だというのだ」
「うーんと……ああ。もう、ネウロは私の生活サイクルに組み込まれてるんだよ。ネウロがいなきゃ、私の生活が成り立たないの」
うん、そうだ。私の日常にはネウロがいる。そうでないと日常にならない。
「なんかさ、このままの生活が続いて、ネウロと結婚とかしちゃうかもしれないね」
このままの流れだと、そーゆー事態もあり得るよね。どうせ一生奴隷だろうし。
「それでずーっとこの生活が続いたら……幸せかもね」
想像したら、確かに幸せそうな私達が見えて。
「ん? ネウロどうしたの?」
「貴様……さらっと重大なことを言っている自覚はあるのか?」
「へ? 私なんかまずいこと言った?」
見ると、顔が若干紅くなっている……かな? 魔人でも赤面するんだ。でもなんで?
「いや、いい……」
ネウロは大きな溜め息を吐いて、トロイへと戻っていった。途中、何もないはずのところで軽くつまずいて、どうしちゃったんだろう。
椅子に座ると、くるりと反対側に向いてしまって、こっちからは見えなくなった。
もしかして、動揺してる? 何でか解らないけど。だって、こっちから顔を背けたつもりだろうけど、その角度じゃあかねちゃんに丸見えだよ?
後であかねちゃんにいろいろ聞いちゃおう。
++ fin ++