「フハハハハ、我が輩を捕まえてみるが良い」
「待ってよ〜っ」
波打ち際で追いかけっこするスーツ姿と制服姿。夕焼けと水しぶきがキラキラと眩しくて――。
……何やってるんだ、私達。
いや、ネウロが私のケータイ持ち逃げしてるから追いかけてるだけなんだけど。
気まぐれで海に連れてこられて、夕日に染まる海を見ながらいい雰囲気だなー、とか思ってたらケータイが鳴って。それは笹塚さんからで。
「今、先生はとてもお忙しいので、またの機会にお願いしますね、笹塚刑事」
ケータイぶんどられて、勝手にディナーのお誘いを断られてしまった。
まあ、ネウロの嫉妬深さは今に始まったことじゃないけどさ。それでケータイとったまま、逃げ出した(?)から、今こんなことになってるわけで。
なんだかんだで追いかけっこを楽しんじゃってる自分が何か悔しい。
「ふぎゃっ」
奇声を上げて、濡れた砂に頭から飛び込んでしまった。
「あちゃー、泥だらけになっちゃったよ……」
「ふむ、貧相さに拍車がかかっているぞ」
「うっさい」
失礼なことを言いながら私の前にかがみ込んだネウロ。珍しく手を差しのべてくれたそのとき。
ざっぱ―――――ん……
大きな波が来て、二人ともびしょ濡れになっちゃった。
「フン……慣れないことをするものではなかったな」
ネウロは差しのべてくれようとした手を引っ込めて、濡れた前髪を掻き上げた。その仕草が、何だかとても艶めかしく見えて。濡れ髪が色っぽくて。スーツが貼り付いた体も、その……。
「どうしたワラジムシ、顔が赤いぞ。風邪でも引いたか?」
いや、だって、そんな微笑み、反則……。
「み……」
「み?」
「水も滴るいいオトコ……な、なんて……」
空気に耐えられなくて、冗談っぽく言ってみただけなんだけど。何かめちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。
「フッ……このミジンコが……」
柔らかく笑うその顔が夕日に照らされて、これ以上ないほど綺麗。
そっと私の顔に触れてくる、湿った革手袋。そのまま顔を引き寄せられて、唇が重なる。
海水を浴びてしょっぱいはずなのに、甘く感じるのはなんでかなぁ?
++ fin ++