孤独の中で ―Deep Emotion―

 地上に来るまで、我が輩は孤独と共に生きてきた。
 魔界の中での、変種中の変種。『謎』でしか空腹が満たされない生き物。他に同種の魔界生物はいない。

 喰うか喰われるかの殺伐とした魔界において、周りは全て異種の者。それは周りが敵だらけであることを意味する。仲間と呼べる者もなく、ただ一人で、自分を護るしかなかった。数々の能力を持つことを許されていたのが、不幸中の幸いか。
 周りが全て異種であるということは、地上に来た今も変わらない。周りは全て人間、あるいは人間から少しだけ外れた者。しかし、魔界とは状況が全く違う。

 我が輩は「孤独」であっても、「孤立」はしていない。

 いや、近頃は孤独すらも感じなくなってきている。もしかしたら、地上に来た時点で、我が輩は孤独ではなかったのかもしれない。

 特定の他者を意識し、それに執着する。それは孤独から這い上がるためのただ一つの手段。初対面から現在に至るまで、我が輩が執着し、パートナーに選んだ人間、ヤコ。そのたった一人の存在が、我が輩の孤独を消し去っていく。
 本質的には一時しのぎでしかないのだろう。ヤコがいなくなれば、恐らく我が輩はまた孤独に苛まれる。

 そのときが来ることを怖れない日はない。

 ヤコは我が輩が生きるために不可欠な存在。

 今まで様々な感情を経験してきた。魔界生物に感情がないなど、本当のところは解らない。ただ、自分が孤独であったために、経験をしてこなかっただけかもしれない。

 そうして、地上の知識と感情を吸収できるだけ吸収した。そこから、ヤコを失えば我が輩がどうなってしまうか、想像に難くない。その感情だけは、経験をしたくないと怖れるほど。

 地上で今我が輩が感じる恐怖。それは、魔界の孤独の中で味わった恐怖とは、全く違う感情。

 そして、やはり魔界では得ることができなかった、何かを願うということ。

 願わくば、ヤコと永遠に離れぬよう――存在の不確かな何かに祈る。

++ fin ++


周りが人間という同種でも孤独を感じるアヤとの対比…になればいいな。



戻るか?