ちょうど『謎』を喰って、一悶着あって、事務所に戻ってきたところだった。
「もう、やだ……」
消え入りそうな声でヤコが呟いた。頭に巻かれた包帯を触りながら。
確かに、今日はいつもより少々乱暴だったかも知れん。逃げる犯人に向かってヤコを投げつけるまではいつも通りだったが、その後少々問題があったか。犯人に振り払われて、ヤコが扉の角に頭をぶつけた。その際に額を大きく切ってしまい、五針縫われて、今ここにいる。
「まったく……一体誰がこんなに鈍くさく育てたのやら」
「……ホントに……あんたは『謎』以外のことはどーでもいいんだね……」
「当然だ。他に何がある」
「…………」
ヤコは呆れたように、我が輩から視線を逸らした。大きく溜め息を吐き、真剣な目を我が輩へ向けて、淀みなく言った。
「本気でさ……探偵役、他の人探して」
一点の曇りもない眸、射抜かれるような視線に、強い意志を感じられる言葉。一瞬ではあるが、我が輩は動揺した。ヤコは……本気で我が輩から離れたがっている。
「奴隷の分際で……我が輩から離れるというのか」
努めて冷静に言ったつもりだ。
「もう、嫌なの。探偵役も、奴隷も、愛情のないあんたも」
「愛情……?」
「そうだよ。私なんて『謎』を食べるための駒に過ぎないんでしょう? 性欲を晴らすためだけに私を抱いていたんでしょう? あんたにとって『謎』以外の全てのことはどうでもいいんでしょう?」
いつの間にか、ヤコの目には涙が溢れんばかりに溜まっていて。それでも輝きを失わない強い色に、この状況でなおも惹かれている自分が滑稽だと思う。
「ヤコ……我が輩は……」
「いい、何も言わないで。そうだよ、奴隷をどう扱おうが、あんたの勝手だよ。でも……もう、限界だよ……」
続く→