SWEET SILENCE

「うーっ、寒い寒い」
 ヤコは寒いと言いながらも、外へ出て、現在進行形で降り積もる雪を手にとってはしゃいでいる。
「そんなに寒ければ屋内にいればいいものを」
「だって、折角の雪だし」
 何が折角なのか解らん……まだまだ人間には我が輩の知らぬ一面があるのだろうな。まあ、ヤコが楽しいのなら少し放っておくか。

「はいっ、ネウロ、雪ウサギ!」

 我が輩の手に乗せられたそれは、楕円形に整えられた雪の塊で、小さな赤い実が二つ、細長い葉が二枚あしらわれていた。なるほど、ウサギと言われればウサギに見えないこともない。言われなければ何だか全く解らんのだが。

「可愛いでしょ!」

 あまりにも無邪気なヤコを見て、加虐心が湧いた。

「何をおっしゃいますか。僕には先生以上に可愛いものなんて存在しませんよ」

 助手の口調で、耳元で囁いてやる。するとヤコは頬を紅く染めて、一瞬固まった。
「え、あ、そ……そ、そろそろ、中に入ろうかっ」
 動きがぎこちない。我が輩の言葉にこうも動揺するとは、面白いものだ。

 そうして、暖房の効いた事務所内へ戻ってきた。しかし、先程まで雪を触っていたヤコの指先は赤くなっていて、簡単には暖まらなさそうだ。

 我が輩はソファに座っているヤコを後ろから抱きしめた。
「ねっ、ネウロ?」
「こんなに指先を赤くして……お体は大切になさってくださいね。先生は僕のものなんですから」
「う、うん……」
 弥子の頬は一向に赤みが引かない。
 最近ようやく、所有物扱いに文句を言わなくなった。良い傾向だ。

続く→



戻るか?