ヤコと笹塚が肩を並べて街を歩く。いつからだろうか。二人でいるところを、事件現場以外で見るようになったのは。
我が輩は何をしているのだ。毎日毎日飽きもせず、ヤコに魔界の凝視虫(イビルフライデー)をつけて、笹塚と笑いあっている様を観察するとは。見れば見るほど、胸の奥に渦巻いているどす黒いものが大きく膨れあがっていくというのに。
それでも見続けるのは何故だろうか。こんな苦しい思いをしてまで。自分で自分の感情がコントロールできない。煩わしい……。
二人が事務所へ向かっているようなので、凝視虫との接続を断った。
ほどなくして、事務所の扉が開く。
「ただいまー」
機嫌良くヤコが入ってきた。笹塚を連れて。
「今、お茶入れますね」
「ん、サンキュ」
笹塚はソファに腰を下ろし、無意識だろうか、煙草の箱を手に取り、はっと気づいてポケットに戻した。
「笹塚刑事、遠慮なさらなくて良いですよ」
我が輩はあくまで助手として、作り物の微笑で応対する。
「いや、弥子ちゃんに煙やるわけにもいかないしな」
相変わらずの無表情を崩さず、しかしその言葉だけでヤコを思いやっているのが解る。恐らく、笹塚相手ならヤコは幸せになれるのだろう。
――幸せ、か。
ヤコが幸せになればそれで良い、などといったありがちな感情は、生憎持ち合わせていない。
一刻も早く笹塚を追い出してしまいたい。この間喰った『謎』に関する報告などがなければ、力ずくでも実行するのだが。
「どうぞっ、笹塚さん」
給湯室からヤコが戻ってきた。
幸せそうな笑顔で笹塚を見るヤコ。それにつられてか、笹塚のポーカーフェイスが僅かに緩む。二人で茶を飲みながら、談笑にふける。
続く→