「アイ? どうしたの、アイ……?」
確かにさっきまで電話で声を聞いていた。でも、今目の前にいるアイはピクリともしない。アイの頭を貫いた穴から、赤いものが流れ出ていた。ねえ、どうして動かないの? 唐揚げを作ってくれるんでしょ?
俺は、動かなくなったアイを目の前に、頭が混乱していた。これが、「死」ってやつなの? 俺が箱にしてきたのとは違う。何が違う? もう何人殺したか解らない。その分だけ、多くの「死」を俺は見てきたはずだ。それとは違う……なんて言えばいい?
「私も、貴方の正体が知りたいのです」
アイはそう言ってた。ねえ、俺の正体、まだ解らないよ。
操縦者を失ったヘリが、そのまま落下した。俺はとっさにアイを庇った。もう庇っても意味がないのに。俺と、アイの、体が重なっている。俺は、アイと、長い時間を重ねてきた。
長い間一緒だった。俺のワガママを黙って受け入れてくれた。そのアイが、もういない。この喪失感……味わったことがない。
俺はアイを抱きかかえて瓦礫から這いだした。目の前にはネウロ達がいた。
「ねえ、X……やっぱり、今こうしているXが、正体なんだよ、きっと」
「何を知った風なことを……」
ネウロの傀儡、桂木弥子の言葉を否定しようとした。何故か目からは涙が零れていた。
「ほら、その涙。その人に向けられたものでしょう?」
彼女はアイを指して言った。
「正体がどうだろうと、今、あなたの中にあるのはその人への気持ちでしょう? 失って、大切だと思ったんでしょう?」
大切……そうか。「大切な人を失う哀しみ」だ、これは。俺はアイの亡骸をぎゅっと抱きしめた。
それからの日々、アイのことだけは決して忘れることがないよう努めた。そして、俺を「我が子」と呼ぶ奴に会った。
ねえ、アイ……。俺の正体、見てよ。ほら、唐揚げを一緒に食べながらさ……。
++ fin ++