ネウロさんが嬉々として何かを作ってるかと思ったら……どうやら一日のタイムスケジュールのようです。拷問と虐待の割合がやけに多いのは、もう見慣れました。
それより弥子ちゃんは、他に気になるところがあるようで。
「ね、ネウロ……それ、さ……」
「む? 何処にケチをつけようというのだ」
「いや、ツッコミどころ満載……って、そうじゃなくて」
「何だ、そんなに言い淀むことか」
「や、その……“我々の”って……それじゃあ私とアンタが一緒に生活してるみたいじゃん」
恥じらいながらも質問をする弥子ちゃん。ネウロさんに肯定を求めているのか否定を求めているのか。どっちにしろ、良いムードになりそうな科白は期待できないと思いますが……。
ネウロさんはきょとんと目を丸くして……でも、次の瞬間には余裕たっぷりの顔で。
「奴隷が主人の行動に合わせるのは当然だろう」
「ど、奴隷化はちゃんと回避したじゃん、この間!」
「やれやれ、あきらめの悪いミジンコだ」
「あっ、諦めてたまるか!!」
人間もカウントに含めるなんてむちゃくちゃな釣り対決で、かえって弥子ちゃんは助かったんだそうです。でも魚限定にしたところで、ネウロさんが釣ろうとしてた(って弥子ちゃんが言っていた)クジラは哺乳類なんですが……。
「フム……。よし、ヤコ! 奴隷契約がイヤなら、別の契約を交わすか」
「はぁ? 別のって……」
「夫婦契約だ」
「!!」
「貴様は既に、法的に契約ができる年齢だろう、ちょうど良い」
「ちょうど良いって何よそれ!! そんなんで結婚なんて……」
ネウロさん! いくらなんでも「ちょうど良い」はないです!! 大好きな弥子ちゃんをずっと傍に置きたいのは解りますが、せめてロマンチックでなくても、それなりのプロポーズとか……。
「何が不満なのだ。愛も金も充分すぎる程あるというのに」
「愛がな……へ!?」
「我が輩の愛もある、探偵業で稼いだ金もある、処世術も身につけ、さらに貴様には社会的地位もある。あと他に何が欲しいのだ?」
「え、や……その……えと……」
「我が輩にも社会的地位を求めるというなら、今すぐにでも身につけてやろう。大企業の社長か、大病院の院長か、それとも有名大学の教授か、敏腕弁護士か……我が輩の頭脳ならどれも容易いことだ」
あ、ネウロさん必死です。必死に弥子ちゃんを繋ぎ止めようと、いつもより少しだけ早口でまくし立ててます。そんなネウロさんに、弥子ちゃんは真っ赤な顔で。
「ぃ……いらない、よ……」
「では、何を望む?」
「…………ねうろ……」
「む?」
「ネウロと、ネウロがくれる愛があれば、それで充分……」
ぎゅっと抱きついて、青いスーツに埋もれるショートカット。それをネウロさんが優しい笑顔で受け止めて、そのシルエットはゆっくりとソファに沈んでいきます。
さて、壁の中で聞き耳でも立てていましょうか。
++ fin ++