HAL事件の時、我が輩は何が何でもヤコを傍に置いた。ヤコがついてこなかったときは仕置きもした。傍にいれば護れる、そう自負していた。
それはきっと、恋愛感情に見せかけた執着だったのだろう。事実、自分の感情を我が輩自身は理解していなかった。一人の女に固執するのを滑稽だと思い、否定してきた。
我が輩の感情が、日々進化している。
地上に来て初めてあった人間。手近で手頃で、簡単に脅しに屈する様に、奴隷として振り回すのにちょうど良いと思った。
そのうち、ヤコ自身が『謎』の断片を理解できるようになり、進化する過程を見るのが楽しみだと感じた。そして、軽い試練も与えた。
そうしているうちに、我が輩の隣にヤコがいるのが当たり前になった。ヤコも進んで我が輩のフォローに回り、奴隷と言うよりパートナーに近い関係になったと言っていいだろう。
そして執着心が強くなり、それは恋愛感情へと変化した。
常に傍に置きたい。ヤコの全てが欲しい。我が輩の隣でヤコが幸せそうに笑うと、暖かいものが体の内から感じられた。
だが、今は――……。
「新しい血族」との命のやりとり。我が輩は全人類を人質に取られているも同然の状況で、魔力を限界まで使わなければならない。もう、ヤコを連れては行けない。
ヤコを危険から護れない。万が一、ヤコが失われることがあれば……悔やんでも悔やみきれないだろう。ヤコを失いたくない。
執着が強かった今までなら、強制してでも傍に置いてきた。今はもうそれはできない。我が輩を置いてでも、ヤコには幸せでいて欲しい。
これが、人間の言う「愛している」ということなのだろうか。
++ fin ++