「ヤコ、来い。ちょっと遊ぶぞ」
満面の笑顔で事務所に戻った。我が輩の心中を察してか、ヤコの顔が強ばっている。人間のみならず、魔人の心まで汲み取れるようになったか。貴様は何処まで進化する?
ヤコを鎖でがんじがらめにする。ヤコの母親と会ったホームセンターで買ったものだ。本当はこんな気分でなく使いたかったのだが、致し方ない。
「この怒り、貴様には解るまい」
ギリ、と鎖を握る。そうは言ってみたが、きっとヤコは解っている。我が輩の『謎』はそのままヤコの『可能性』なのだ。
進化し続けるヤコなら、そのうち我が輩の心の内を全て読めてしまうのだろう。今も、我が輩に配慮し、馬乗りになっている我が輩から逃げようとしない。
ヤコを床に転がしたまま、ガシャガシャと拷問道具を床に落とし、ソファに寝転がった。少しでも魔力を回復させなくてはならない。
ヤコの視線に気づいたが、我が輩は動けなかった。体が、重い。静かに息をすることすらできない。
疲れた。予想はしていたが、魔力体力共にかなりの消耗を強いられた。しばしの安息に、ヤコを抱きたかったが、その体力すらも惜しい。せめて、傍にいさせたい。いや、傍にいて欲しい。ヤコの存在で、ヤコが無事であることで、せめてもの安堵を。
我が輩の心が進化したのか、弱くなったのか。いつの間にか平穏とヤコがイコールになっていた。これは依存か信頼か。はたまたこれも恋愛感情の一部なのか。まだまだ『謎』は多い。
「ヤコ……」
無意識に呟いていた。ヤコに届いたかどうかは解らない。届いていてもいなくても良い。
ただ、ヤコがそこにいれば良い……。
++ fin ++