「ネウロの眸ってさ、マラカイトみたいだね」
唐突に我が奴隷はそう言った。マラカイト……我が輩は素早く手元のパソコンで検索をかける。なるほど、これがマラカイトか。深い緑に明るい緑の縞模様が混じっている、不透明の石。
「確かに、我が輩の眸は深い緑ではあるが……もう少し美しい宝石には例えられんのか」
「エメラルドとか、ペリドットとかー?」
「そうだ。これではまるで我が輩の眸が濁っているとでも言いたそうではないか」
「よく解っ……ぐへっ」
怖れもなく言うヤコの頭に、肘をついてやった。まあ、一点の曇りもない眸、などと言われても嘘くさくて同じ行動を取っただろうが。
その姿勢のまま、我が輩はディスプレイを見やった。エメラルドなどのように透き通ってはいないが、これはこれで美しい縞模様、とも言えないこともない。しかし、ヤコは何故こんな有名とは言い難い石を真っ先に例えに持ってきたのか。
「確かにエメラルドもペリドットも綺麗な緑だけどさー。私はマラカイトの緑が一番好きなのっ」
「…………」
その言葉に不意をつかれ、肘への力が抜けた。その隙にヤコは素早く我が輩と距離を取った。改めてヤコの顔を見ると、心なしか頬が紅潮していた。
「それは、我が輩への好意と受け取って良いのだな?」
我が輩はニヤリと笑いながら言った。途端、ヤコの顔が赤みを増した。一足飛びにヤコへ近づき、その顎を持って我が輩の顔に近づけた。
「良いのだな?」
満面の笑みをしてやった。ヤコはますます顔を赤くし、こくり、と小さく頷いた。
「良い答えだ」
ヤコに小さく口づけをしてやり、我が輩はパソコンの前に戻った。ヤコは真っ赤な顔をしたまま、ソファに座り込んだ。
我が輩はまたディスプレイに目をやる。そこにはマラカイトの写真のみならず、宝石言葉や石の持つ魔力とやらまで詳細に書かれてあった。それを読んでいき、我が輩は思わずクッと小さな笑みをこぼした。
「な、何よ。まだ不満?」
「いや……貴様は色合いだけでこの石を選んだのか?」
「まあ、大半の理由はそれ……。ぁ、あとは……その……」
俯きながら、なにやらごにょごにょと言っているが、まあ察しはつく。我が輩はソファに座るヤコを後ろから抱きしめた。そして、耳元で囁いた。
「宝石言葉……なのだろう?」
「し、知ってるならいちいち言わなく……んっ」
戯れ言を言う唇を唇で塞いだ。舌を絡ませると、ヤコの体の力が抜けていった。そのまま、ソファに横たわらせた。
「ちょ……ネウロっ」
「何だ? 我が輩は貴様の望み通りのことをしてやろうとしているだけだぞ? 何とも良い主人ではないか」
我が輩はヤコの上に覆い被さり、ヤコを押し倒した格好となった。首筋に舌を這わすと、ヤコは甘い吐息を漏らした。
ディスプレイにはこう映っていた。
マラカイト(別名:孔雀石)
鮮やかな濃緑色の不透明石。
宝石言葉は「再会、繁栄、恋の成就」です。
他人の悪意を跳ね返し、持ち主を危険から護ってくれると言われています。
護ってやるとも、我が愛しき奴隷よ。今までも、これからも。我が輩の全てを以て――。
++ fin ++