蝉の声が心地よい夏、ふと脇道に入ってみたらそこには大きな向日葵が上を向いて立っていた。
「わ、こんなところに。向日葵は単独でも存在感ばっちりだよね。種も美味しいし」
「行き着くところはいつも同じなのだな……」
「うぐっ」
「向日葵が太陽の方を向くというのは、はてギリシャ神話だったか」
「そーなの?」
ネウロの話によると、太陽神アポロンに恋をしてしまったニンフの変わり果てた姿が向日葵なんだとか。ニンフの恋は叶わなかったけど、ずっとアポロンを見つめ続けてるんだって。
「あらゆるものに意味を見いだし、神話として語り継ぐ。人間もなかなか面白いことをするな」
そういえば向日葵の花言葉って「貴方を見つめています」だっけ。なんか、妙に納得。ネウロって神話も知識として吸収してるんだ。ロマンティックでいいよね。
「しかし……常に見続けているなど、今の世の中ではストーカーと言うのではないか?」
「あー……そうかもね……」
前言撤回。現代はロマンティックに優しくない。少し昔に流行った「待つわ」とか「まちぶせ」とかの歌詞って、そういえばストーカーっぽいよね……。流行った当時は健気とか思われていたんだろうけど。
…………あれ?
「ネウロ、私に魔界の凝視虫(イビルフライデー)つけてたことあったよね」
「む、奴隷の動向を知るのは主人として当然だろう?」
「それも、ストーカ……むぐっ」
「何を言う。それでは我が輩、犯罪者になってしまうではないか」
いろんな意味でもう犯罪者だよ!!
そうツッコみたかったけど、口がふさがってるし、後が怖いから言わなかった。
「まあ、それも良い」
「? 何が?」
ネウロは私の口を解放すると、その手で今度は顎を掴んでぐっと距離を縮めてきた。近いっ! 唇が触れるか触れないか、そのくらい。
「貴様を見つめ続けられるなら、犯罪者にもなってやろうではないか」
そんな科白、そんな顔で、そんな声で、反則……。悔しいから、そのまま唇を塞いでみる。ネウロは少し戸惑ったみたいだけど、すんなり受け入れてくれた。
ちゅ、と音を立てて唇が離れる。そっと目を開けてみると。
うっとりとした眸で、見つめられていた。
++ fin ++