――どうして、キミなんだろう。
疑問がグルグルと頭をかき回すんだけど、いつも答えなんて出なかったよ。ボクが馬鹿だからだ、なんていつもみんなに言われている言葉で、考えるのをやめるんだ。
特別美しい、というわけじゃない。少なくとも、ボクの美の基準からは外れている。だけど、どうにも印象深い。それは、美しさとは違う、キミ自身の魅力ってやつなんだろうね。
たまに街で見かける、ただそれだけの少女。
カフェで、女友達と他愛ないお喋り。目の前にずらりとケーキを並べて、それを端から平らげていく。至福、としか言いようのない笑顔。それと軽快な喋り声。それらにボクは酔わされて、その場に立ちつくす。
そんな自分に驚いたよ。ボクが、ボク以外のものに陶酔してしまうなんて。しかも、「人間」相手に、なんて。
そう……キミは「人間」なんだ。そのうちボクか、他の五本指によって滅ぼされる運命にある。キミが「血族」の仲間なら……そんなあり得ないことを、何度も想像したよ。
いつもたくさんの女の子に囲まれるボクだけど、何故か、キミには拒絶されるような気がしていたんだ。根拠なんてない、単なるカンだったんだけどね。
でも――。
「我が名はテラ。脳噛ネウロ、この世に顔(アイコン)はふたついらない。ボクの破壊は…キミには決して防げない」
――そう言ってその場を去る瞬間。
「何なのネウロ、今の……グヘッ」
聞いたことのある澄んだ声が耳に入ってきた。振り返れば、予想通りの人間が目に入る。
「あ……」
思わず近づいてしまいそうになったけど、踏みとどまった。
キミがいるのは、ネウロの隣。つまりは、そういうことなんだね。キミはネウロを心配し、ネウロはキミに優しい眼差しを向ける。おおよそ魔人らしくないその視線が、ボクの想像を肯定していた。
ああ、全部全部埋めてしまいたい。
全てを埋め尽くして……、魔人も人間も、早く早くいなくなってしまえばいい――。
++ fin ++