依頼人の来ない事務所の夕暮れ時。最近は『謎』を持った依頼がなかなか来なく、ネウロはいつになく不機嫌であった。
「ウジ虫……空腹の我が輩の目の前でよくもそんなに喰えるものだな」
「うぐっ……」
弥子が事務所で何かを喰べているというのは、別段珍しい光景ではない。しかし、空腹になれば怒りっぽくもなるもので。弥子は本能的にネウロの言葉から苛立ちを感じ取って、飲み込みかけていたたい焼きを詰まらせてしまった。
「げほっ…そ、そんな、ぐふっ…こと言ったって、依頼が来な……」
ドンドンと胸を叩く弥子の様子に、何かをたくらんだ顔のネウロが近づく。
「ああ、すみません先生。いきなり話しかけて、喉に詰まらせてしまったのですね」
助手の口調で優しく弥子の背中を撫でるネウロの手に、しかし、弥子が感じ取ったのは危機感だった。
「な…なに……? なんか怖いよ?」
「そんな、怖いだなんて……やはり先生は鋭くていらっしゃる」
ニタリと三日月のような口をして、弥子を威圧するネウロ。
「何、腹いせに貴様の体を対価にしようとしただけだ」
「か、体!? え!? 身売り!?」
弥子はとっさに立ち上がり逃げようとするも、あっさりとネウロの腕に絡め取られてしまう。
「フハハ、貴様の貧相な体なぞ誰が買うか」
「ひどっ……」
「いただくのは内臓だ」
「!!! そっ、それはそれで良くな…」
ちぅ…
「んっ」
「知っているか、ヤコ」
「んふ…な、なに?」
不意打ちの言葉とキスで混乱しているところへ、魔人は甘く囁いた。
「唇というのは、外に出た内臓、と言われているそうだ」
追い打ち、とはまさにこれだろう。
「えっ、んん……ふ、ぅん…ぅ……」
弥子は次の行動が取れないまま、ネウロの思うがままに唇を奪われ続けた。
++ fin ++