事務所に入って真正面の光景にびっくり。ネウロが、まさか、机に肘ついて居眠りしてるなんて!
そーっと、近づいてみる。耳を澄ませれば、確かに寝息が聞こえて。ちょっといたずら心が湧いた。
――ちゅ
肘をついていない方の頬に、そっとキスをした。普段もっとすごいことをされてるはずなのに、この一瞬はすごくドキドキして。
い、良いよね? これくらい。
なんて思っていたら、ネウロがむくっと起きあがった。思わず出かかった悲鳴を呑み込んで、声をかける。
「お、おはようっ、ネウロ」
「…………」
返事がない。ただのしかばねのようだ。……そうじゃなくて。もう一度声をかけてみる。
「ネウロ?」
「……やこ?」
焦点が定まっていない目。ぼーっとした口調。これは……寝惚けてる! あのネウロが寝惚けてる!!
「そこにいたか、やこ……」
驚いて固まっていたら、突然ネウロの腕が伸びてきて。引き寄せられて、抱きしめられた。
「わがはいのめのとどかないところへいくな……」
「!!」
何? 何の夢見てるの!?
なんか、独占欲丸出しな科白は変わらないのに、切なそうに聞こえるのは何故?
「やこ……?」
確か、寝言に返事ってしちゃいけないんだよね。どっかで聞いた。何とか離れようと身を捩るけど。
「やこ、やこ……」
探るように、私を抱きしめる腕に力がこもる。
とても大事そうに腕に収めるもんだから、なんだか普段より動悸が激しいよ。こんなに大事そうに扱われたことが未だかつてあっただろうか、いやない(反語)。
「ね、ネウロっ?」
思わず話しかけてしまった。すると、ネウロはぱちりと目を開けて。こちらをきょとんとした顔で見た。
「ネウロ、やっと起きた?」
「…………」
何かを思案していたのだろう。一瞬の間があって、今度は力の限り抱きしめられた。
「ちょっ…ギブギブ!!」
「……煩い。おとなしく我が輩の腕の中にいろ」
寝起きにいきなりこれ!?
……でも、今日は許しちゃおうかな。
無意識下で大事にされてることが解ったんだもんね。
++ fin ++