ふと、何となく思うことがあって、いつものようにトロイで作業しているネウロをじっと見つめる。
「何だ、ヤコ?」
「……ネウロは、いつか……ううん、何でもない」
「いつか……? 我が輩がここを去るとでも?」
「何で解っ…ぐへっ」
ネウロが、ソファに座っている私の上にダイブしてきた。
「ワラジムシの考えることなど、単純だからな」
そのまま、なんかそういう体勢になって……コトの始まりを示すように唇が重なる。
「んっ…ちょ、ネウ……あ…」
「余計なことなど考えられなくしてやろう」
「余計って…あ、ちょっと……んん…ん……」
私の抗議の声は、ネウロの舌に絡め取られて。
余計なんかじゃないのに。いつ何処でどうなるかなんて解らないのに。
――突然、お父さんのように……。
「…………笑え」
「…はっ?」
「笑え」
「いたたたたっ」
両頬をぐにーっと引っ張られて、パチンと弾かれた。
「貴様は泣くのではなく、笑うべきだ」
あ……いつかに聞いた言葉。
「それとも、我が輩が去る時……貴様の記憶を消してくれようか?」
「やだ!!」
間髪入れず即答していた。確かに、記憶がなくなれば失った悲しみは味わわずに済む……けど。
「ていうか、無理だよ。私の中……心にも体にも、アンタの痕跡だらけだもん。それに……」
「む?」
「何一つ忘れるな、って言ったのアンタじゃん。悲しいことだって、絶対忘れてやらないんだから!」
そう言うと、ネウロはにやっと笑って。
「そうだ、それで良い。そうやって笑っていればいい」
……なんかしてやられた気分……だけど、いっか。
「アンタこそ、私がいなくなって長生きしてても、私を絶対忘れないでよ?」
「無論だ」
そして二人笑顔で交わす口づけは、確認と再開の合図。
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悲しみに満ちる世界
心まで消えそうなとき
優しい言葉よ胸に
届け、届け
どうか笑って
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++ fin ++