「貴様の眸は……VXガスのようだな」
「…………は?」
「猛毒の神経剤だ」
「なっ! 何で毒なのよ!?」
「まずその色……琥珀のような輝きのある金茶色」
「え」
「化学的安定性も高いために、そこかしこに残留し、痕跡を残す」
「……た、確かにほとんどの食べ物屋さんで顔覚えられてるけど……」
「皮膚からも吸収されるため、触れただけでも毒が回る……人類が作った化合物で最も毒性が高いと言われているそうだ」
「……何が言いたいのよ」
「つまりは――」

そこで言葉を切った魔人は少女に近づき、少女のあごを指で持ち上げ口づける。
空いた手が少女の腰に回され、濃厚な口づけの後、その唇は閉じた瞼にそっと押し当てられた。

「――こうして我が輩も、貴様という強い毒に冒され、囚われたのだ」

そうして少女の耳元へ移動して。
「本物の毒と違うのは、解毒が叶わぬということだな」

甘く囁く魔人の声は、それこそ毒のように少女の中を駆けめぐる。

「貴様の痕跡は、我が輩に一生残り続ける」

とどめに耳たぶを甘噛みすれば、もう少女は完全に魔人の毒に蝕まれて。

「……そ、そんな毒は…あんたの方、だよ……」

まっ赤な顔で俯き、心も体も委ねてしまうのだ。

++ fin ++




戻るか?