「む、また懲りずに口紅とやらを塗っているのか」
「違うよ、これはリップクリーム」
「どう違うのだ?」
「どうって……口紅は、化粧品? リップはお化粧じゃないよね……」
「ふむ、確かに今貴様が塗っているものには色素が入っていないな」
「うん、無色透明。美味しそうな香り付きのがたくさんあるけど、食べちゃいそうだから無香料……」
「して、それを塗る意図は何だ? 生ゴミの匂いがしないのに、貴様が持ち歩くなぞ……」
「ぅ……い、一応、さ……ケアしておくのがマナーってもんじゃない?」
「マナー? いったい何の――」
言いかけた時、弥子はいきなりスカーフをぐいと掴んで引き寄せて。
ちゅっ
「…………」
「……唇ががさがさに荒れてたら嫌でしょ…?」
頬を赤くして目を逸らす弥子が、あまりにも愛らしくて。
「…………ヤコ。そのケアは、こちらにも有用だな」
「ぶっ……が、がさがさにしておけば良かっ…いやいや、何でもないっ」
ネウロさん、欲情しちゃいましたとさ。
++ fin ++