「もし明日世界が壊れちゃったら?」
「そうだ」
「そんなの想像できないよ……何なの突然?」
「我が輩より遙かに脆弱なその体、いつ壊れるとも知れん」
「確かに……後悔しながら死ぬのはやだね」
ふと少女が思いついて、魔人のいるデスクへと近づいた。
「どうした、ヤコ」
何の前触れもなく、ぎゅっと魔人を抱きしめる少女。
突然すぎる行動に、一瞬思考が追いつかなかった魔人。
「そしたらさ……その時は、ネウロが私の息の根を止めて」
「何を……」
「ネウロの腕の中で死にたい」
「馬鹿なことを……」
魔人は少女をそっと抱き返した。
互いに、相手の体温を感じようと体を寄せる。
「馬鹿なことじゃないよ。さっきネウロが自分で言ったじゃん」
「……そうだったな」
魔人は溜め息を一つ。
まさかこんな答えが返ってくるとは思わなかった。
「撤回しよう。今後、貴様が死ぬことはない」
きっぱりと断言する魔人。
少女はきょとんとしたが、やがてある考えが頭に浮かぶ。
「……もしかして、これからずっと護ってくれるの?」
「命令だ。老衰以外で死ぬことは許さん」
「……ありがと」
素直になれない魔人に、少女は苦笑した。
「礼などはいらん。貴様に拒否権はない」
「うん……解ってる。でも、ありがと」
少女は緩む頬を抑えられず、魔人の胸に顔を埋めた。
魔人は、腕の中の少女が何処にも行かないよう、強く抱きしめた。
++ fin ++