カラクリを知ってしまえば

5312435131215
843678644336
37946518769
……

「む、なんだこの数字の羅列は……パスカルの三角形……いや、ちがうな」
「へ? あ、これ? ピラミッド占いっていうの。昔ちょっと流行ったんだよね」
「思春期の女子特有の胡散臭い流行りものか?」
「あー、うん……そうだね……」
「貴様はそれで何を占ったというのだ」
「相性占いの一種でさ。名前を数字に置き換えて足し算してくの。例えば……」

 あいうえおに12345を割り振り、母音の当てはまる数字に一文字ずつ置き換える。

 桂木弥子→かつらぎやこ→131215
 脳噛ネウロ→のうがみねうろ→5312435

「それを並べて、隣り合う数字を足していくの。二桁になったら十の位と一の位を足して……数字が二つになるまでやって、その数字が相性を%で表したものなんだよ」
「………………………………………64」
「え?」
「計算結果だ」
「早ッ!! そっかぁ、64%……微妙な数字だね……」
「我が輩との相性など、良かろうが悪かろうが、気にするだけ無駄だろう」
「って、相手バレてるし。うん……アンタが所有権を主張してる間は私に他の選択肢ないもんね……」
「少なくとも貴様が生きている間はな」
「言うと思ったよ……。もう、それでも良いとか思う私は重症だよねぇ」
「…………フン、自覚があるなら良い」
「……ネウロ、もしかして照れぅぎゃあっ! 何でもっないでっす……あっ、そう! さっきネウロが言ってた三角形って?」
「む、パスカルの三角形、か?」
「それそれ。何なの?」

1 1
1 2 1
1 3 3 1
1 4 6 4 1
……
・頂点に1を置く。
・1つ下段に行くと数字が一つ増える。
・両端を1とし、その内部には、上段の隣り合う数を足した数字を置く。

「こうしてできるのが、いわゆる『パスカルの三角形』と呼ばれるものだ」
「あ、これ……えーっと……どっかで見た……」
「二項定理の係数を簡単に導くことができる、と受験生に人気があるらしいな」
「あー! そうそう、それ! 数学でやった……よね?」
「我が輩に聞くな」
「でも、いまいち解らなかったんだよね……結局なんなの?」
「二項式…… x + y のような未知数が二つの式のべき乗を展開して得られる式を表す定理だ」
「え、みちすう……べきじょう……? あ、うそごめんなさい、そんな大きな溜め息吐かないで……」

(x + y)0 = 1 ゼロ乗すると1になる(→定義)
(x + y)1 = x + y
= 1×x + 1×y
(x + y)2
= x2 + 2xy + y2
= 1×x2 + 2×xy + 1×y2
(x + y)3
= x3 + 3x2y + 3xy2 + y3
= 1×x3 + 3×x2y + 3×xy2 + 1×y3

「こうして係数を抜き出してみれば、先程の三角形と対応しているだろう」
「あ、ホントだ! すごい! パスカルさんってすごい人なんだね!」
「…………………」
「え、なに、いきなり不機嫌な顔……」
「いえいえ、先生が小手先の技公式の意味も知らずにそれを導けるようになったなんて、素晴らしいじゃありませんか! 一体僕が何を不満に思うのでしょう!」
「何か、イタイよ……まあ、確かに式の意味とか全然解らないけどさ……」
「フム……やはりこういうものは真に理解してこそ身に付くものだ。ヤコよ、数学的帰納法を用いて自らの手で証明してみろ」
「無理無理無理ッ!! だいたいその、数学てきなんとかって何よ!?」
「要は0から順に当てはめていって、全ての数について成り立つことを示せば良いんです。パスカルの偉大さが解る先生なら、こんなの5秒ですよね」


 …………いやいやいやいやいやっっっ! しかも結局やきもちじゃねーかッ!!!(弥子、心の叫び)

++ fin ++

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えーっと……こんなんで解りましたか?

数学的帰納法とは
「自然数全体に関する命題 P(n) が真である(成り立つ)」といったようなことを証明する方法の一つです。
・P(0) は真である。
・任意の(好き勝手な)自然数 k に対し、P(k) が真であれば、P(k + 1) も真である。
例えば任意の自然数 k に 1 を代入する。
k = 1 (つまりP(1))が真であれば、k + 1 = 2 (P(2))も真である。
k には好き勝手な自然数を入れて良いので、k = 2 と入れてもOK。
すると、k = 2 のとき、k + 1 = 3 ですね。
先程、P(2)が真であると示されたので、k + 1 = 3 (P(3))も真。
では、k = 3 とすると、k + 1 = 4 で……以下略。

よって、任意の自然数 n について P(n) は真である。
といった手順で証明します。



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