賑やかに行こう!

おぎゃあおぎゃあおぎゃあ……

「産まれました!! 可愛い男の子ですよ!」

 ネウロの手をしっかり握ったまま、大事を成し遂げた弥子は薄く微笑んだ。普段からネウロに拷問されているとはいえ、やはり出産時の苦しみは段違いだったようで。ほっと一息ついて、我が子を見ると。

「…………サル?」

「……………………」
「……………………」

 愛おしい人との愛の結晶。生まれたてのその姿は、しわくちゃな顔がサルっぽくて、思っていたほど可愛くない。
 場の空気が凍り付き、早々と病室に戻される弥子夫婦であった。

「まったく……貴様は母になっても豆腐なのだな」
「う……ごめん、つい……」
「まあ、良い。少し休め」
 ネウロは弥子の頭を優しく撫でた。弥子へ注がれる眼差しは、いつにもまして優しい。
「うん、ありがと……優しい、ね」
「フン……今日は、よくやったからな……褒美だ」
 視線を逸らし呟く姿は、未だ素直になりきれない魔人らしい。そんなところに安心し、弥子は目を閉じた。


「あー、お腹空いた!」
 目覚めて第一声がこれなのは、弥子にしたら正しいのだろう。周りに少し笑われながらも、ベッドを降りて歩き出す。もちろんネウロも付き添って。
 途中、新生児達の部屋を覗いた。しわくちゃだった顔は、今はもうふっくらしていて、これなら「可愛い」と何とか言える。
「うんうん、これだよ、ドラマとかでよく見るのって」
「フム……確かに、生まれたてとは違うな」
「でしょー。こう見ると、顔立ちが綺麗……きっとネウロに似てるね」
 二人はそんな他愛ない会話を楽しみながら、食堂へ向かった。

 弥子が過ぎ去った食堂……当然のように壊滅状態であることは言うまでもない。

「これからは、護るものが増えるんだね」
 ベッドに座り、隣にいるネウロに寄り添いながら、幸せそうに微笑む弥子。ネウロは弥子の肩を抱き、やはり、穏やかに笑んでいる。
「我が輩は変わらんぞ」
「え?」
「今まで通り、貴様一人を護っていく。子供は貴様が護れ」
「え……なにそれ。子供の世話、私一人に押しつけるの!?」
「騒ぐな。世話を押しつけるのではない。ただ、何か起きた時に護るのは貴様だ」
「うーん……」
「腑に落ちないか……仕方あるまい。我が輩が全力で貴様を護る以上、そうするしかないのだ」
 ネウロは弥子を引き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。
 子供も確かに大切である。しかし、ネウロにとっては、それでも弥子が一番大切なのだ。そして、なんだかんだ言っても、弥子はそういうネウロが好きなのである。
「うん……絶対、全身全霊で護ってね」
「この間、神とやらに誓ったばかりだぞ」
「ふふ、そうだったね」

 きっと、この愛は風化することはないのだろう。心からそう感じる二人。

「しかし、病院というところはやはり好かん。さっさと退院しろ」
「そうだね。叶絵とか吾代さんとか笹塚さんとかも、待ってるもんね」
 退院したら、盛大なお祝いが待っている。

 さあ、賑やかにやろうじゃないか!

++ fin ++

←戻る

これから素晴らしい日々が待っている!
そんな感じを目指しました。



戻るか?