「ヤコ。『無限遠点』というものを知っているか?」
「何、突然……。知らない。何、それ?」
「ユークリッド平面の互いに平行な――…」
「ごめん、全然解らない」
「おお、豆腐には難しすぎたか。要するに、平行な直線が交わる点のことだ」
「ふーん……。あれ? 平行線って交わらないから平行って言うんじゃないの?」
「その通りだ。だから、無限遠点というのはユークリッド平面上には存在しない」
「え、ないの? えっと、ゆーくり……あーもう、頭こんがらがってきた!」
「ククッ……やはり貴様の頭蓋骨の中には脳が入っていないのだな」
「むぅっ……ネウロのいじわる……」
「……そのような顔でむくれていると、我が輩、つい手を出したくなってしまうぞ?」
「ちょっ、もう、ネウロってばすぐそっちに持っていくんだから!」
「フハハハ」
「もうっ……あっ……や、あ……」
「はぁ…………ねぇ、ネウロ?」
「何だ、ミジンコ」
「無限に遠いって、宇宙の果てみたいな感じかなぁ?」
「さあ……どうだろうな」
「交わらないはずのものが交わるって、世界の終わりみたい」
「何故そう思う?」
「何となく、だけど。出逢っちゃいけないものが出逢うって、ファンタジーとか、そんな感じじゃない?」
「所詮は空想というわけか?」
「い、いいじゃん。どうせ、存在しないんでしょ?」
「存在しないのなら、存在するような概念を作れば良い」
「え?」
「現に、非ユークリッド幾何学という――…」
「ストップストップ! 解らないから!」
「豆腐が。つまりは、現に平行線の交点は存在するということだ」
「どういうこと?」
「魔界に棲む魔人と地上の生き物である人間……。我が輩と貴様は、現に交わっているだろう?」
「ま、まじわ……ぅ、うん……」
「今、ここに、あるのだ。宇宙の果てではない。ましてや、世界の終わりなど来るはずもない」
「く、来るかも知れないよっ?」
「来るなら来るでかまわん。そのリミットまで、貴様を離さずいることに変わりはない」
「え……」
「貴様ら女の好む言葉を使うなら……貴様は我が輩と添い遂げ合う運命にあるのだ」
「……ずーっと? いつまでも?」
「ああ、そうだ。いつまでも、永遠に。それこそ、無限に遠い時が来ても、だ」
「そっか……」
「不服か?」
「まさか! ……すごく、嬉しいよ……」
「フッ……そうか……」
++ fin ++
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